2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管内栄養状況を変える腸内細菌の生存戦略と糖尿病発症との関連性の解明
Project/Area Number |
17K08288
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松本 靖彦 帝京大学, 医真菌研究センター, 講師 (60508141)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高血糖 / 腸内細菌 / グルコース / カイコ |
Outline of Annual Research Achievements |
ショ糖の摂取による高血糖は、肥満や糖尿病を引き起こす原因となる。これまでに我々は、独自に開発したカイコの実験系を用いてショ糖摂取後の血糖値の上昇を抑制する腸内細菌株を同定している。この腸内細菌は宿主の腸管内で糖の吸収を阻害すると考えられるが、その作用機序や腸管内栄養状況に与える影響は不明である。本研究の目的は、腸管内栄養状況を変える腸内細菌の生存戦略の解明とその腸内細菌の糖尿病発症への影響を明 らかにすることである。 本研究により、腸内細菌が宿主の因子に作用して腸内栄養状況を変えて優先 的に増殖する機構の解明につながると期待できる。さらに、宿主の腸管内で糖の吸収を阻害する腸内細菌による糖尿病発症の抑制効果が期待できる。 我々がスクリーニングにより同定した腸内細菌YM0831株は、カイコを用いた実験系におけるショ糖の摂取による血糖上昇以外にも、グルコースの摂取による血糖値の上昇を抑制することがわかった。次に、カイコの摘出腸管を用いたex vivoの腸管グルコース輸送実験系を確立し、腸内細菌YM0831株がそのグルコース輸送を阻害することを見出した。さらに、腸内細菌YM0831株がヒト腸管培養細胞であるCaco-2細胞におけるグルコース取り込み活性を阻害することも明らかにした。また、トランスポゾンによる遺伝子変異株ライブラリーを作成し、Caco-2細胞のグルコース取り込みに対する阻害活性が低下した腸内細菌YM0831株由来の変異株を得ることに成功した。以上の結果から、腸内細菌YM0831株が宿主腸管内のグルコースの取り込みを抑制することにより、宿主の血糖値の上昇を抑制することが示唆された。このことから、この腸内細菌YM0831株が宿主腸管内のグルコース濃度の上昇という腸管内栄養状況を変える効果がある菌株であることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画にあった腸内細菌YM0831株の宿主血糖上昇抑制における作用機序の一つとして、宿主腸管細胞のグルコース取り込みの阻害であることが明らかにできた。また、計画どおり、トランスポゾンを用いた遺伝子変異株ライブラリーの作成と、その変異株ライブラリーを用いたスクリーニングにより、Caco-2細胞のグルコース取り込みに対する阻害活性が低下した腸内細菌YM0831株由来の変異株を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、Caco-2細胞のグルコース取り込みに対する阻害活性が低下した腸内細菌YM0831株由来の変異株の遺伝子変異部位の同定と責任遺伝子の同定を行う。また、腸内細菌YM0831株からCaco-2細胞のグルコース取り込みに対する阻害活性を指標に責任分子の精製を行う。遺伝学的な解析と生化学的解析の結果を統合して、腸内細菌YM0831株がどの遺伝子の発現を介してどういう分子を生産することにより宿主の腸管のグルコース取り込みを阻害するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年度の研究計画の内、哺乳動物を用いた試験を行う予定であったが、カイコとヒト腸管培養細胞を用いた検討からいくつか知見が得られたので、そのシステムを用いて作用機序の予測を行うことに集中した。よって、哺乳動物を用いた実験に使用する予定の資金を平成29年度に使用しなかった。また、平成30年度は、活性物質の精製が計画されているが、構造決定のための質量分析やNMR解析を委託する場合の資金もあったほうがいいと考えて、繰り越すこととした。
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Research Products
(12 results)