2018 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞における神経細胞のLRP1機能変化と治療戦略
Project/Area Number |
17K08289
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高木 教夫 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50318193)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脳虚血 / グルタミン酸受容体 / LRP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルタミン酸は記憶の形成や学習などに関与する内因性神経伝達物質であるが、虚血などの刺激により大量に放出されると興奮性の脳神経障害を誘導する。N-methyl-D-aspartate (NMDA) 受容体は脳虚血などの急性神経疾患の細胞死にも寄与している。これまで網膜神経節細胞における酸化ストレス障害、グルタミン酸誘発障害および栄養因子除去に対して、アポE含有リポプロテイン(LP)は保護効果を示し、その機序としてLRP1受容体がきよすることを明らかにしてきた。前年度まで、大脳皮質神経細胞ではNMDA誘発細胞障害に対するLPの効果は観察されず、一方でLRP1受容体の切断が惹起され、さらにLRP1の細胞内ドメイン(ICD)が増加していることを明らかにしてきた。グルタミン酸受容体誘発細胞障害によるICDの著しい増加は、網膜神経節細胞ではほとんど観察されないことも明らかにしてきた。 さらに、LRP1受容体の切断に深く関与するfurinに着目し、グルタミン酸誘発細胞障害に対するfurin阻害薬(2種類)の効果を検討したところ、濃度依存的にその細胞障害を抑制した。本年度は、蛍光免疫染色法で各タンパク質の局在を検討した結果、通常、細胞全体に α-chain および ICD を含むβ-chain がスパイン様に観察されたが、NMDA 障害によって α-chain は神経突起上で観察されなくなり、ICD は核の周辺に集積する傾向が観察された。さらに、furin阻害薬はNMDA 誘発神経細胞障害後の核周辺へのICD集積を抑制した。次にラット脳梗塞モデルを用いて LRP1 の変化を検討した結果、初代培養大脳皮質神経細胞と同様に脳梗塞領域の LRP1 α-chain は非梗塞領域と比較して減少し、その一方で ICD が著しく増加することをin vivoでも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初代培養大脳皮質神経細胞を用いた研究は、概ね順調に進んでおり、これまでの成果は纏められ査読付きジャーナルに投稿後受理され掲載された(参考)。現在、神経細胞障害後に切断され増加するLRP1のICDの病態生理学的変化を纏めた論文を投稿中である。Furin阻害薬の細胞障害抑制効果のメカニズム解明も同時に進行している。 参考:Yamada M, Hayashi H, Yuuki M, Matsushima N, Yuan B, Takagi N., Furin inhibitor protects against neuronal cell death induced by activated NMDA receptors. Scientific Reports, 2018; 8(1) : 5212.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の計画を継続するとともに、脳梗塞モデルを用いたLRP1の病態生理学的変化およびfurin阻害薬の効果検討にも着手する。また、研究の進捗状況を加味しながら、初代培養神経細胞の他に、N2a細胞等を用いた神経突起伸長に及ぼすグルタミン酸障害の影響とfurin阻害薬の効果を検討する予定である。In vivo脳梗塞でのICD産生メカニズムと細胞内ICDの病態生理学的意義を平成30年度以降の計画に沿いながら検討していく。また、脳梗塞後のLRP1チロシンリン酸化の検討も進め新たな脳梗塞病態と治療戦略の提示を試みる予定である。
|
Research Products
(4 results)