2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08295
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
牧野 麻美 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 協力研究員 (20373368)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コレステロール / 脂肪滴 / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは培養肝細胞Huh7を用い、アシルコレステロール・アシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、(1s,2s)-2-[3-(2,2-dimethylpropyl)-3-nonylureido]aminocyclohexane-1-yl 3-[N-(2,2,5,5-tetramethyl-1,3-dioxane-4-carbonyl)amino]propionate (F1394)を加えることにより細胞内の遊離コレステロールを上昇させると、低分子量Gタンパク質、Rab18活性に依存して脂肪滴と小胞体の融合が起こることを見出した(Makino et al. Mol Biol Cell 27, 3293 (2016))。遊離コレステロールの導入に利用されるメチル-b;-シクロデキストリンとコレステロールとの複合体(Mb;CD/Chol)をF1394と併用すると細胞死が観察される。この実験系を用い、siRNAライブラリーを用いて不活性化すると細胞死を起こさないタンパク質の検索を行い、Golgi associated, gamma adaptin ear containing, ARF binding protein 2 (GGA2)、 sphingosine-1-phosphate phosphatase 1 (SGPP1)、Rab18、ADP ribosylation factor 1 (ARF1)、inositol polyphosphate-5-phosphatase K (INPP5K)の5つのタンパク質を同定した。本研究では脂肪滴のサイズを正確に測定することが求められる。これまで私たちは精製した脂肪滴のサイズ測定には光散乱を用いていたが、光散乱は粒子サイズが不均一の場合誤差が大きいため、個々の脂肪滴のサイズを測定できるナノ粒子マルチアナライザーを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では1.遊離コレステロールが蓄積すると、どのようなメカニズムで脂肪滴が融合するのか?2.PLIN2はどのようなメカニズムで分解するのか?3.コレステロールが蓄積した脂肪滴はどのように小胞体と相互作用するのか?4.遊離コレステロールの細胞毒性発現に関与するタンパク質の同定の4つの項目を明らかにすることを目的としている。平成29年度はこのうち最も重要と考えられる4.の候補タンパク質を同定することができた。これらのタンパク質は1.~3.にも深く関与すると考えられ、これらのタンパクの機能を明らかにすることで研究は大きく進むと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
siRNAライブラリーを用いて同定された5つのタンパク質のうち、GGA2はトランスゴルジネットワークとリソゾーム間の、ARF1はゴルジ体間の小胞輸送に関与するタンパク質である。SGPP1はスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)を加水分解する酵素で、細胞内のS1Pレベルを調節することでERストレスによって誘導されるオートファジーを制御していると言われている。INPP5Kはホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸を加水分解する酵素である。これらの結果は遊離コレステロールの毒性発現には細胞内小胞輸送、細胞内脂質代謝が関与していることを示唆している。私たちの結果はまた、S1Pが脂肪滴の形成、動態に重要な役割を果たしていることを示唆している。S1Pは細胞外に放出され、細胞表面のレセプターを介して細胞を活性化するが良く知られている。本年度はS1Pレセプターアンタゴニストの遊離コレステロールの細胞毒性、脂肪滴の形成への影響を検討し、細胞内のS1Pと細胞外のS1Pのどちらが働いているのかを明らかにするとともに、S1Pの作用メカニズムについて検討する。 遊離コレステロールの毒性を知る上で、微細空間でのコレステロールの分布、動態を知ることはきわめて重要である。コレステロールを可視化する試薬としてはフィリピン染色が広く使われているが、フィリピンは毒性が高く、また糖脂質に結合することも報告されている。私たちはコレステロール結合毒素の脂質結合ドメインにGFPを結合させたものを生きた細胞でのコレステロールの分布測定に使用している(D4-GFP)が、電子顕微鏡レベルでの使用は条件が限られている。今年度は電子顕微鏡レベルで使用可能な新たなコレステロールの標識法を検討する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は比較的予算の使用が少ないin vitro2での人工脂肪滴の正常解析およびsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングデータの解析および確認実験を中心に行ったため、次年度使用額が生じた。平成30年度は次年度使用額および平成30年度請求額を用いて、細胞の維持のため血清(ウシ胎児血清)、培地(主としてDMEM培地および抗生物質)、プラスチックディッシュ、プラスチックピペット、顕微鏡観察のためのガラスボトムプラスチックディッシュ等および脂質抽出のためのガラス試験管、ナス型コルベン、分液ロート等のガラス器具、薄層プレート等を購入する。また脂質抽出のための有機溶媒(クロロホルム、メタノール、アセトン、トルエン)、薄層クロマトグラフィーのための標準脂質(ブタ脳由来スフィンゴミエリン、卵黄由来ホスファチジルコリン、卵黄由来ホスファチジルエタノールアミン、ブタ脳由来ホスファチジルセリン、ブタ肝臓由来ホスファチジルイノシトール、ガラクトシルセラミド、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM2、コレステロール等)、免疫染色のための抗ApoB抗体、抗PLIN2抗体および、蛍光二次抗体(緑、赤の2種類)を購入する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Phospholipase Cb1 induces membrane tubulation and is involved in caveolae formation2017
Author(s)
Takehiko Inaba, Takuma Kishimoto, Motohide Murate, Takuya Tajima, Shota Sakai, Mitsuhiro Abe, Asami Makino, Nario Tomishige, Reiko Ishitsuka, Yasuo Ikeda, Shinji Takeoka, and Toshihide Kobayashi
Organizer
EMBO Symposium Molecular and Cell Biology of Membranes
Int'l Joint Research