2018 Fiscal Year Research-status Report
ドパミン代謝とミトコンドリアストレスによる細胞毒性の相互増強機構
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17K08302
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹島 仁 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00374562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドパミン / ミトコンドリア / 活性酸素 / フェロトーシス / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒質緻密部ドパミン神経細胞の変性・脱落は、進行性中枢神経変性疾患であるパーキンソン病の責任病変とされる。しかし、孤発性パーキンソン病の発症に至るメカニズムは現在まで不明である。これまでに明らかとなった家族性パーキンソン病の責任遺伝子や、薬剤性パーキンソン病モデル動物は、ミトコンドリアの品質管理機構の破綻やミトコンドリア呼吸鎖機能の異常がドパミン細胞死を加速させることを示唆している。一方、ドパミンはその分解代謝過程において、活性酸素や毒性代謝物を生じることが報告されている。そのため、ミトコンドリアストレスとドパミン代謝機構が相互作用することでドパミン神経細胞に特異的な脆弱性がもたらされると予見されるが、両者の関連機序は依然として不明である。 本研究では、ゲノム編集により樹立したドパミン代謝遺伝子ノックアウト細胞を用いて、ドパミン代謝機構とミトコンドリアストレスによる細胞毒性の増強機構を検証し、薬理的なドパミン代謝調節およびミトコンドリア機能調節による神経変性の阻止方法を探索、評価する。これまで、神経成長因子によりドパミン神経細胞様に分化したラットPC12細胞において、ミトコンドリア呼吸鎖阻害剤であるロテノンがもたらす細胞死がドパミン産生に依存すること、特定のドパミン分解代謝酵素の阻害がロテノンによる細胞死を抑制すること、カテコール骨格を有するハーブ由来抗酸化成分も同様にこの細胞死を抑制することを見出した。これらは、予防医学としてのドパミン神経変性阻止の可能性を示唆するものである。さらに、分化PC12細胞に対してロテノンが誘導する細胞死が、非アポトーシス性の細胞死であることを見出した。現在。ミトコンドリアストレスとドパミン代謝の介在による神経細胞死誘導機構について詳細を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度までに、従来報告に比して低濃度のロテノン処理がドパミン神経細胞様分化後のPC12細胞において細胞死を誘導すること、ドパミン産生における鍵酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの薬理的阻害あるいは遺伝子ノックアウトが、ロテノン誘導性細胞死に耐性をもたらすことを見出し、ミトコンドリアストレスとドパミン代謝機構の相互毒性増強機構の存在が示唆された。さらに、パーキンソン病治療に用いられている特定のドパミン分解代謝阻害剤が、ロテノン誘導性細胞死を抑制することを見出した。一方、神経症状に対して西洋伝承医学で用いられるハーブ由来の特定抗酸化成分に、ロテノン誘導細胞死を抑制する効果、神経突起縮退を抑制する効果を見出した。このことは、予防医学として積極的にドパミン神経細胞を保護しうることを示唆する。 ミトコンドリアストレスとドパミン代謝機構の介在が、如何にしてドパミン神経細胞特異的な細胞死を誘導するか、各種阻害剤を用いてロテノン誘導性ドパミン神経細胞死に与える影響を解析した。全カスパーゼ阻害剤であるZ-VAD-FMKの添加は、ロテノン誘導性細胞死を一部抑制したことから、部分的にアポトーシスが関与することが示された。一方、鉄依存的細胞死誘導機構であるフェロトーシスを阻害するFerrostatin-1や鉄キレート剤のデフェロキサミンを添加すると、ロテノン誘導性細胞死の大部分が抑制された。興味深いことにリソソームやエンドソームの酸性化を阻害するバフィロマイシンA1によっても、ロテノン誘導性細胞死の大部分が抑制された。ロテノン誘導性の細胞死条件の精査によりこれら知見を見出した。しかし、ドパミン代謝酵素のノックアウトを企図したゲノム編集後のPC12細胞において、エクソンスキップによる遺伝子発現が認められ、当該年度の研究計画はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
従来研究では、ドパミン神経細胞死に異常ミトコンドリア由来およびドパミン分解代謝由来の活性酸素が介在することが報告されている。一方、当該研究によりドパミン神経細胞様に分化後のPC12細胞では、ロテノン誘導性細胞死に鉄依存的細胞死誘導機構であるフェロトーシスの関与が示唆された。細胞内での過剰な2価鉄イオンは、活性酸素の細胞毒性を増強することが知られている。また、パーキンソン病患者においては脳内鉄イオンの不均衡が報告されている。そこで本年度研究として、ロテノン添加有無の条件下で分化PC12細胞内における遊離2価鉄の動態を特異的蛍光プローブによって観察する。細胞内遊離2価鉄上昇の起因としては、フェリチンからの貯蔵鉄放出、細胞外からの鉄取り込み増加などが考えられる。リソソーム酸性化阻害剤であるバフィロマイシンA1はロテノン誘導性細胞死を抑制したことから、リソソームやオートファジーによるオルガネラ分解がこの細胞死に関与する可能性がある。そこで本研究では、分化PC12細胞におけるロテノン誘導性細胞死に、フェリチン特異的オートファジーであるフェリチノファジーが関与するか否か検討する。蛍光標識フェリチンと共に、フェリチノファジーマーカーとなる蛍光標識NCOA4の細胞内動態に、ミトコンドリアストレスがどのような影響を及ぼすかライブセルイメージングにより検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度には、ゲノム編集によるドパミン代謝酵素ノックアウト細胞を用いて、ミトコンドリアストレスがもたらす細胞毒性を測定し、関連タンパク質の細胞内局在を免疫染色により調査する予定であった。しかし、エクソンスキップにより企図した遺伝子ノックアウトが完了せず、これに伴い購入予定であった抗体試薬類の購入に達せず、次年度に繰り越す予算が発生した。現在、新たなノックアウト細胞を作製中であり、抗体試薬類に繰り越し予算の使用が必要である。
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[Presentation] Analysis of non-apoptotic cell death mediated by dopamine catabolism under inhibition of mitochondrial respiration2018
Author(s)
Sasajima H, Fujioka Y, Sato A, Nepal P, Kashiwagi S, Tsuzuki A, Aoki O, Fujioka M, Yoshida A, Paudel S, Nanbo A, Ohba Y
Organizer
第41回 日本分子生物学会年会