2021 Fiscal Year Research-status Report
ドパミン代謝とミトコンドリアストレスによる細胞毒性の相互増強機構
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17K08302
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
笹島 仁 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00374562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経変性 / フェロトーシス / ドパミン / ミトコンドリアストレス / 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内ドパミン神経細胞の変性は、嗅覚障害やパーキンソン病の原因となる。ドパミン神経細胞は、他の神経細胞に比べミトコンドリアストレスに脆弱であり、ミトコンドリア品質管理不全につながる遺伝子変異は家族性パーキンソン病の原因となり、ミトコンドリア呼吸鎖複合体阻害剤のモデル動物への投与はドパミン神経細胞に特異的な細胞死を誘導することが知られている。 ゲノム編集により各種ドパミン代謝酵素の欠損細胞株を作製し、ミトコンドリアストレス耐性を検討した結果、ドパミンの分解代謝とミトコンドリアストレスが負のシナジーによる細胞死を誘導することが明らかとなった。孤発性パーキンソン病の発症トリガーは未だ不明であるが、パーキンソン病発症者では、この負のシナジーが背景に存在する可能性がある。昨今、iPS細胞由来のドパミン神経細胞移植によるパーキンソン病治療の試みがなされているが、この負のシナジー背景を解決しなければ、移植細胞も変わらぬ要因で神経変性に至ることが懸念される。 本研究では、これまでアポトーシスと考えられてきたドパミン神経細胞に特異的な細胞死が、非アポトーシス性細胞死誘導であることを明らかにし、細胞内ドパミン代謝機構の調節がこの細胞死の抑制に効果的であること、モノアミン誘導体の一種に強力なドパミン神経細胞保護作用があることを明らかにした。このほか、毒性閾値ぎりぎりのミトコンドリア呼吸鎖複合体阻害剤によるドパミン特異的細胞死は、ドパミン合成阻害剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、鉄キレート剤、オートファジー阻害剤でも抑制しうることが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドパミン神経細胞に特異的な細胞死は、鉄依存的な細胞死であると推測され、2価鉄依存的な蛍光指示薬を用いて、ドパミン神経変性過程における鉄動態を、リアルタイムイメージングにより検討している。しかし、この蛍光指示薬による蛍光は、バックグラウンドが高く、かつ細胞集団で均質に起きるイベントではないドパミン特異的細胞死を検出するにあたり、未だ例数が不足しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内で鉄イオンの反乱を誘引するのは、フェリチン貯蔵鉄の分解過程であるフェリチノファジーの誘導である。そこで、フェリチノファジー誘導マーカーを蛍光標識し、ドパミン神経細胞の過程での鉄動態の変化を、間接的に検出する。このリアルタイムイメージングに並行し、細胞内でのフェリチノファジー誘導マーカーの変化を、生化学的手法によっても解析する。
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Causes of Carryover |
おもに試薬価格改定の誤差による。繰り越し費用は次年度の試薬消耗品購入の費用とする。
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