2019 Fiscal Year Research-status Report
Foundation of chemotherapy for malignant glioma targeting mTOR
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17K08304
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
江田 岳誉 新潟大学, 医歯学総合病院, 薬剤師 (90772038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棗田 学 新潟大学, 脳研究所, 助教 (00515728)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | drug repositioning / glioma / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、悪性神経膠腫の薬物治療において新しい化学療法を提示することである。実験は以下のテーマに分けて行った。 1. 悪性神経膠腫に対する新規化学療法剤の抽出:3種のヒト由来悪性神経膠腫細胞株(U251MG, T98G, LN229)において、既存医薬品を用いてcell viability assayを行い、腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を調べた。その結果、抗菌薬として臨床使用されているクリンダマイシン(CLD)から、著しい抗腫瘍効果を確認した。さらにCLDは、テモゾロミド (TMZ)との併用によりその効果を増強した。 2, mTORシグナルと腫瘍:mTORはグルコースやアミノ酸などの栄養センサーとして作用し、細胞の増殖および生存における調節因子としての役割を担う。PI3K/Alt/mTORシグナルの過剰な活性化は、腫瘍化を引き起こすことが知られる。上記の細胞株にCLDを作用させてアッセイを行うと、CLDはmTORリガンドであるp70S6K, S6Kのリン酸化をdown regulateした。CLDがmTOR経路に作用することを示している。 3. 疾患脳とmTOR:上記in vitro の実験結果を生体内で確認することが目的である。そのためには神経膠腫のモデルを作成する必要がある。 我々は実際の脳腫瘍患者の剖検脳から腫瘍を単離し、安定継代可能な細胞株としてNGT-41を樹立した。xenograftモデルは、NGT-41を免疫不全マウスの皮下へ異種移植することで作成された。このモデルにおいて、CLD、TMZの単独および併用投与を行い、腫瘍増殖能を評価した。CLDはTMZとの併用によって皮下腫瘍の増殖を有意に抑制した。CLDが悪性神経膠腫の治療薬として有用である可能性を示すとともに、mTORシグナルが腫瘍の生存に重要な役割を担うことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費助成事業期間内において、本研究課題に関する論文を発表することができなかったので、進捗状況としてはやや遅れていると言える。しかし、研究目的であった悪性神経膠腫の新規治療法確立のための候補薬の抽出、in vitroにおける候補薬の薬効分析、in vivoでの検証実験まで一通りの実験を終了することができた。特に 「mTORシグナルと腫瘍化」では、悪性神経膠腫の治療候補薬とするクリンダマイシン(CLD)が、mTOR基質であるp70S6 kinase、S6 kinaseのリン酸化をdown regulateすることがわかった。我々が独自に樹立したNGT-41細胞株を用い、xenograftモデルで CLDおよびTMZ併用時の抗腫瘍効果を評価すると、移植した腫瘍は著しく増殖が抑制されることがわかった。摘出した腫瘍の免疫染色ではMIB1発現が低下し、細胞増殖が著しく抑制されていルコとがわかった。腫瘍制御という観点からmTORC1が重要な作用点であることを示すことができた。この点では想定していた以上の研究成果も得ることができたとも考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題から既存の抗菌薬であるクリンダマイシン(CLD)の潜在的な作用として、悪性神経膠腫の細胞増殖を抑制することがわかった。さらにCLDはTMZとの併用により抗腫瘍効果を増強することも判明した。これまでヒトの膠芽腫ならびに各種固型癌において、PI3K/Akt/mTORシグナルの活性化など、シグナル伝達の異常が報告されている。我々はCLDの作用点を調べるためにmTORと腫瘍増殖や維持との関わりに着目し、実験を進めた。その結果、CLDはmTORシグナル下流のp70S6Kおよび S6Kの活性を調節することがわかった。さらにCLDはMGMTタンパクの発現にも関与することが判明した。しかし、抗腫瘍薬としてのCLDの明確な作用点がわからない。今後は各種シグナル阻害剤を用いて、または遺伝子導入などによりmTOR活性を調節した場合のタンパク合成系への影響を検討し、腫瘍化の詳細なシグナル経路やメカニズムを特定して新規治療法の開発につなげたい。 腫瘍モデルでは、引き続きxenograftモデルの作成をすすめる予定であるが、皮下腫瘍モデルにとどまらず、NGT-41脳内投与モデル動物の樹立を目指し、CLD治療効果を脳内で確認する予定である。 このモデルにおいてCLDによって生存期間の延長が示され、最終的には、mTORC1経路の不活性化や細胞周期の停止、またオートファジーなどの機序により腫瘍の進展が抑制されることを実験的に示すことができればと考えている。
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Causes of Carryover |
科学研究費の助成を受け、本研究課題は順調に進めることができた。しかしながら、研究成果としての論文投稿は3年間の助成期間内に間に合わせることができなかった。そのため、研究費助成事業の期間延長を申請し、承認をいただいた。次年度使用額としての残額は論文投稿のための費用に充当する予定である。現在、論文は投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)