2017 Fiscal Year Research-status Report
ドパミン作動性神経への亜鉛過剰流入から視たパーキンソン病・運動障害の機序と回避
Project/Area Number |
17K08312
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
玉野 春南 静岡県立大学, 薬学部, 特任講師 (30322697)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 6-hydoxydopamine / 亜鉛イオン / 酸化ストレス / 黒質細胞死 / ドーパミンニューロン / 運動障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで注目されなかったドパミン作動性神経への細胞外亜鉛イオン(Zn2+)の過剰な流入がドパミン作動性神経変性ならびにその変性による運動障害の要因となることを実証するものである。H29年度の研究計画に基づき、パーキンソン病モデル動物作製に用いられる神経毒6-ヒドロキシドパミン(6-OHDA)によるドパミン作動性神経細胞内Zn2+レベル増加のメカニズム、ならびにその増加とドパミン作動性神経変性ならびに運動障害との関係を解析した。ラットの黒質に6-OHDAを投与すると黒質細胞内Zn2+は増加したが、この増加は細胞Zn2+キレーターのCaEDTAおよびグルタミン酸受容体サブタイプのAMPA受容体の阻害剤であるCNQXの存在下で抑制された。また、6-OHDAを黒質に灌流すると、黒質の細胞外グルタミン酸濃度は増加し、細胞外Zn2+濃度は低下した。このことから、6-OHDAはZn2+の流入経路として知られるCa2+透過型AMPA受容体活性化を介して流入することが示唆された。また、6-OHDAをラット黒質投与し2週間後における黒質および線条体における神経細胞死および運動障害(アポモルフィン誘発による回転運動増加)は、細胞内Zn2+キレーターのZnAF-2DAまたはTPENの黒質同時投与により改善した。さらに、6-OHDAにより黒質細胞内Ca2+レベルも増加したが、この増加はZnAF-2DAまたはTPENの黒質投与により影響されなかった。これらの結果から、6-OHDA黒質投与による運動障害には、黒質細胞外Zn2+流入による細胞内亜鉛イオン増加に起因した神経細胞死が関与すること、この黒質細胞外Zn2+の流入にはAMPA受容体活性化が関与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究実績をMol. Neurobiol.等の国際学術雑誌に掲載することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
農薬の長期的摂取とパーキンソン病発症との関係が注目されている。パラコート、ロテノンの数週間に及ぶ長期暴露により、黒質-線条体ドパミン作動性神経変性伴うパーキンソン病様症状が観察されている。そこで、これらの病態におけるドパミン作動性神経内Zn2+の増加の関与を検討し、関与がある場合にはZn2+キレータによる改善効果を検討する。さらに、6-OHDAやパラコートによる活性酸素種がグルタミン酸作動性神経終末からのグルタミン酸放出を増大させている可能性がある。この可能性についても検討する。
|
Research Products
(20 results)