2017 Fiscal Year Research-status Report
うつ治療標的としての海馬成熟神経の機能調節とその意義の解明
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17K08316
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬木 恵里 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 准教授 (70378628)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海馬 / うつ治療 / 神経成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬成熟神経の興奮性増大を含む「脱成熟」機能変化が、うつ治療効果に寄与するという仮説を立て、海馬のシナプス機能変化に着目した新たなうつ治療標的の同定を目指している。 平成29年度は、海馬シナプス機能・接着関連機能の調節に着目した新たなうつ治療標的を評価した。これまでのマイクロアレイ・定量PCR解析による予備検討から、電気けいれん刺激で発現減少する遺伝子を同定している。それら遺伝子の内、2つの遺伝子に着目した。遺伝子Aは上皮接着の構成要素因子であり、遺伝子Bは細胞外で接着や成長因子の機能を制御するプロテオグリカンである。そこで、これら標的候補に対する人工 miRNAをAAVベクターに組み込み、AAVウイルスを作成し、海馬歯状回に投与することで、生体海馬でこれら遺伝子の発現を抑制した時の成熟神経の機能変化を検討した。その結果、遺伝子BのmiRNAの海馬導入によるミクログリアの活性化・神経分化マーカー発現変化と、遺伝子AノックダウンによるBDNFの発現増加が観察された。また、オプトジェネティクスを用いて海馬特異的に神経を活性化させるためのAAVウイルスの作成を行った。 さらに、電気けいれん刺激による海馬神経の興奮性増大のメカニズムを検索するため、シナプス関連因子のタンパクレベルでの発現変化を興奮性シナプス・抑制性シナプスの構成因子から検討したところ、グルタミン酸AMPA受容体サブユニットのリン酸化の現象が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はオプトジェネティクスの立ち上げを目標としていたが、AAVウイスル作成に時間を要した。しかし、平成30年度に予定していた新たなうつ治療標的の同定とその意義については、海馬歯状回におけるノックダウンシステムが構築できたため、予定より先行して解析を進め、2つの遺伝子ノックダウンによりそれぞれ異なる表現系を得ることができた。 当初平成29年度に予定していたオプトジェネティクスを用いた解析は、ウイルスの作成が完了したため、平成30年度に遂行可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、オプトジェネティクス法を用いて、海馬神経特異的に活性化した時の行動変化と機能変化を検討するための解析系を構築する。AAVウイルス歯状回投与による遺伝子発現系を用いて、チャネルロドプシンを歯状回成熟神経へ発現させ、どれほどの光刺激が、歯状回神経の持続的な興奮性増大に必要かを検討する。繰り返しの光刺激による神経機能の持続的変化を、遺伝子発現(c-Fos, 成熟神経マーカー等)・組織化学(シナプスマーカー発現)・電気生理(興奮性の変化)によって解析するとともに、うつ治療刺激による機能変化と比較する。
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Causes of Carryover |
国内研究打ち合わせを学会内で行うことが可能だったため、研究打ち合わせ用の旅費分額が次年度使用額(20,823円)になった。平成30年度は、実験用動物、研究用試薬、器具など消耗品に約1,000,000円、研究成果発表・研究打ち合わせに50,000円、論文校閲に50,000円使用する予定である。
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