2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring functional regulation of hippocampal mature neurons as a target for anti-depressant treatment
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17K08316
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬木 恵里 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 准教授 (70378628)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | うつ病 / 海馬 / 成熟神経 / うつ治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬成熟神経の興奮性増大やシナプス機能変化を含む「脱成熟」機能変化は海馬での神経新生と協調して、うつ治療効果に寄与するという仮説を立て、海馬機能調節やうつ治療に関わる標的の同定を目指した。2017年度から2019年度にかけて、以下の3点を明らかにした。 1)抗うつ治療モデルである電気けいれん刺激を用いて、海馬での神経新生と脱成熟の関連性について検討したところ、新生した神経の生存や分化は促進する一方で成熟過程は抑制することを見出し、元来存在する成熟神経の脱成熟の他に、新生神経の成熟抑制も重要であることを示唆した。 2)副腎皮質刺激ホルモン長期投与による治療抵抗性うつモデルを用いて、うつ治療による抵抗性要因の探索を行ったところ、海馬での神経栄養因子BDNFの発現誘導の抑制が起きていることを見出し、成熟神経機能調節へのBDNFの関与を示唆した。 3)うつ治療による海馬成熟神経の下流シグナルを探索する目的で、うつ治療により発現が減少する接着関連因子デスモプラキンと神経栄養因子NT-3の関与について、歯状回での遺伝子ノックダウン法を用いて検討した。その結果、デスモプラキンは神経成熟を抑制する一方で、NT-3は神経成熟を促進する働きがあることが示唆された。これらの結果より、うつ治療によるNT-3の発現抑制は、「脱成熟」機能変化に寄与している一方、デスモプラキンの発現抑制は「脱成熟」状態を元に戻す役割をしている可能性を示唆した。 これらの結果から、うつ治療により、海馬成熟神経と神経新生は協調して、歯状回を興奮性の高い性質へと変化させていること、また海馬でのBDNF発現増加が抗うつ様行動に重要な役割を持つこと、また脱成熟に関わる分子として、デスモプラキンとNT-3の新たな役割を示唆することができた。
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