2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K08321
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
平松 正行 名城大学, 薬学部, 教授 (10189863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
衣斐 大祐 名城大学, 薬学部, 助教 (40757514)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ベタイン / 3xTgマウス / ホモシステイン |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)患者では、脳内において産生されるアミロイドβ(Aβ)タンパク質の凝集・沈着による老人斑およびリン酸化tauタンパクの蓄積により引き起こされる神経原線維変化などにより神経細胞死が引き起こされる。しかし、現在、ADの根本治療薬はないため、発症を遅らせる予防的対策が求められている。 3xTg-AD(3xTg)マウスは、遺伝子改変技術によりAβ産生を増加させ、tauリン酸化を亢進させることで、学習・記憶障害を誘発するADモデルマウスである。近年、認知症患者の血液中のホモシステイン(Hcy)量が健常者よりも高いこと、それら患者の認知機能と血液中Hcy量との間には負の相関があり、脳内の過剰なHcyは酸化ストレスなどを引き起こすことが報告されている。生体内におけるHcyは、植物由来のベタインによってメチオニンに変換されることが分っている。そこで本研究では、3xTgマウスにベタインを慢性的に処置し、3xTgマウスの学習・記憶を行動薬理学的に評価した。同月齢の野生型(WT)マウスと3xTgマウスを比較したところ、6ヶ月齢時では両群間に学習・記憶能の差は認められなかったが、9ヶ月齢時において3xTgマウスの学習・記憶障害が顕在化した。そこで6ヶ月齢時から3ヶ月間のベタイン慢性処置を行ったところ、9ヶ月齢時の3xTgマウスにおける学習・記憶障害は、認められなかった。そこで次に、学習・記憶を司る海馬を組織学的に観察した。9ヶ月齢時におけるWTおよび3xTgマウスの海馬を比較したところ、3xTgマウスでは海馬CA1領域における細胞の核が萎縮していたが、ベタインの3ヶ月慢性投与でその変化は抑制された。 以上より、ベタインの慢性投与は、ADモデルマウスの学習・記憶障害および海馬細胞の形態異常発現を抑制した。このことからベタインが認知症予防に有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3xTgマウスにベタインを慢性的に処置し、3xTgマウスの学習・記憶を行動薬理学的に評価した。同月齢の野生型(WT)マウスと3xTgマウスを比較したところ、6ヶ月齢時では両群間に学習・記憶能の差は認められなかったが、9ヶ月齢時において3xTgマウスの学習・記憶障害が顕在化した。そこで6ヶ月齢時から3ヶ月間のベタイン慢性処置を行ったところ、9ヶ月齢時の3xTgマウスにおける学習・記憶障害は、認められなかった。そこで次に、学習・記憶を司る海馬を組織学的に観察した。9ヶ月齢時におけるWTおよび3xTgマウスの海馬を比較したところ、3xTgマウスでは海馬CA1領域における細胞の核が萎縮していたが、ベタインの3ヶ月慢性投与でその変化は抑制された。 以上より、ベタインの慢性投与は、ADモデルマウスの学習・記憶障害および海馬細胞の形態異常発現を抑制した。このことからベタインが認知症予防に有用である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに我々は、アルツハイマー病(AD)モデル(3xTg)マウスへのベタイン慢性投与が、学習・記憶障害の発現を抑制することを明らかにしてきた。今後は、ベタインの作用メカニズムを解明していきたい。 ADにおける神経変性の原因の1つとして知られているアミロイドβタンパク(Aβ)をマウスの脳室内に投与すると学習・記憶の障害が認められる。我々は、既にベタインの前投与が、Aβ脳室内投与による学習・記憶障害発現を抑制すること、さらにそのベタインの作用がベタインのトランスポーターであるbetaine/GABA transporter (GAT2/BGT-1)の選択的阻害薬によって消失することを明らかにしている。そこで今後は、3xTgマウスを用い、学習・記憶障害が顕在化してくる9ヶ月以降の海馬を用いてGAT2/BGT-1の遺伝子およびタンパクの発現を調べる。さらに3xTgマウスの海馬においてアデノ随伴ウィルス(AAV)によるGAT2/BGT-1のノックダウンまたは過剰発現が、ベタイン慢性投与による学習・記憶障害抑制作用に与える影響を調べる。以上からベタインの作用におけるGAT2/BGT-1の発現および意義が明らかになる。 次にGAT2/BGT-1を介して細胞に取り込まれたベタインが、どのようなシグナル経路に関与するか調べるために網羅的な遺伝子またはタンパク発現をRNA-seqまたはプロテオミクスを行い調べていく。その後、発現変化した分子群からパスウェイ解析を行うことでベタインが細胞内でどのような分子と相互作用し、作用を示すかを調べていく。
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Causes of Carryover |
平成30および31年度に使用する予定のBGT-1 shRNA を組み込んだAAV微量投与時に両側投与用脳定位固定装置、およびエレクトロホルダー(2本)を、当初平成29年度に購入する予定であったが、消耗品等の購入を優先したため、予算的に購入を見送った。今年度は、予算的に少し余裕ができる予定のため、平成30年度早期に購入し、予定通りの実験を実施していく予定である。
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