2017 Fiscal Year Research-status Report
神経保護シグナルとタウリン酸化制御の解析に基づく新規アルツハイマー病治療薬開発
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17K08323
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
高鳥 悠記 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (90411090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 利明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (10303843)
宮坂 知宏 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (90342857)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は進行性の神経変性疾患であり、症例が報告されてから約100年経た今も、発症・進行の機序には不明な部分が多く、根本的な治療方法は確立されていない。アルツハイマー病の病理学的特徴として、認知学習機能に重要であるコリン作動性ニューロンの脱落が挙げられる。アルツハイマー病治療薬の多くは、神経伝達物質のアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性を阻害することにより、認知機能障害を緩和することを目的として開発されたが、近年の研究から、アルツハイマー病治療薬の治療効果には、AChE阻害活性に加えて神経保護作用などの複数の異なる作用が関与する可能性が指摘されている。申請者はこれまでに、ラット胎仔由来初代培養大脳皮質細胞において、3種のアルツハイマー病治療薬、ドネペジル・ガランタミン・タクリンが神経保護作用を有することを見出し、Phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K) -Akt経路が神経保護作用の伝達に必要であることを明らかにした。さらに、Akt下流のGlycogen synthase kinase-3(GSK-3)の活性が、アルツハイマー病治療薬処置により制御されていることを発表し、GSKがアルツハイマー病治療薬の神経保護作用に重要であることも明らかにしている。 本研究では、アルツハイマー病治療薬の神経保護作用の作用点とそこに至る作用機序を明らかにする。 本年度はまず、初代培養大脳皮質神経細胞においてタウの過剰リン酸化が惹起される条件を探索し、低温負荷処置によりタウのリン酸化が惹起されることを見出した。また、リン酸化タウ特異的抗体を用いたWB法により、低温負荷処置の24時間前からアルツハイマー病治療薬ドネペジルを処置することにより、タウ過剰リン酸化が抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画通り、タウ過剰リン酸化の制御について明らかにするために、タウの過剰リン酸化をアルツハイマー病治療薬が抑制するかどうかについて順調に検証することが出来た。タウのリン酸化について、当初予定していたAmyloid-βペプチドやグルタミン酸ではなく、低温負荷処置を用いるという変更があったが、タウの過剰リン酸化アルツハイマー病治療薬度ドネペジルによってリン酸化の抑制が見られており、本年度の目標は達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法として、遺伝子発現制御・Caspase切断の制御・NMDA受容体の機能制御について、切断や機能制御を特異的に検出する抗体を用いてアルツハイマー病治療薬の作用点となっているか検証し、それらの活性制御がGlycogen synthase kinase-3(GSK-3)の下流で行われているかどうか、Phosphatidylinositol 3-kinase-Akt-GSK-3経路の阻害薬を用いて検討することを考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) タウリン酸化の条件の検討に時間を要したため、タウリン酸化抑制の機序の解析にまで到達できず、次年度に繰り越した。 (使用計画) 本年度は、タウリン酸化抑制の機序を明らかにするために、PI3K-Akt-GSK-3経路の分子に対する特異的アンタゴニスト(またはアゴニスト)をアルツハイマー病治療薬と同時に処置して、タウのリン酸化をWB法で観察する。これにより、前年度に繰り越した分も含めて効率的に使用する予定である。本年度も、研究経費として消耗品類(薬品、培養関係消耗品、実験用動物)の他、共同研究、研究成果発表のための旅費を計上する。
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Research Products
(4 results)