2021 Fiscal Year Research-status Report
Study in functional mechanism of neurodegenerative mediators
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17K08327
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
矢上 達郎 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (00363812)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経細胞変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、中枢神経系においてアラキドン酸カスケードの病理的役割を解明してきた。同カスケードは、分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)・細胞質型ホスホリパーゼA2 (cPLA2) ・シクロオキシゲナーゼ(COX)・ リポオキシゲナーゼ(LOX)・プロスタグランジン合成酵素(PGS)・ロイコトリエン合成酵素(LTS)等の代謝酵素とアラキドン酸代謝物で構成されている。アルツハイマー病や脳卒中において神経細胞のアポトーシスが知られており、sPLA2-IIA, cPLA2-IV, COX2等の代謝酵素が関与している。さらに、両疾患においてPGD2の増加が報告されている。我々は、PGD2がアポトーシスを誘導していることを見出し、その非酵素的代謝物である15d-PGJ2 がアポトーシス誘導の本体であることを突き止めた。15d-PGJ2は内在性抗癌物質として知られており、神経変性メディエイター説が提唱され支持されている。15d-PGJ2 の膜受容体prostaglandin D2 receptor 2/chemoattarctant receptor-homologous molecule expressed on T-helper type 2 cells(DP2/CRTH2)および核受容体 peroxysome-proliferator activated receptor γ (PPARγ)はアポトーシス誘導に関与していなかった。15d-PGJ2の新規膜標的蛋白質を探索し候補として神経特異的エノラーゼ(NSE)を同定した。NSEは細胞質ばかりでなく、神経細胞膜上にも発現していた。膜NSEを抗NSE抗体で刺激すると神経細胞死は誘導された。しかしながら、15d-PGJ2とは異なり抗NSE抗体はcaspase3を不活性化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
15d-PGJ2 と同様に抗NSE抗体は神経細胞死を誘導したが、抗NSE抗体による神経細胞死ではcaspase3活性が基底状態よりも抑制されていることを見出した。ウエスタンブロッティングにおいて抗NSE抗体によるCaspase1の分解を検出しているので、抗NSE抗体によるcaspase3分解の可能性が示唆された。15d-PGJ2 によるアポトーシスではユビキチン化蛋白質の蓄積が観察されるが、抗NSE抗体による神経細胞死では基底状態よりも蓄積量は減少し、ユビキチンープロテアソーム(UPP)活性の亢進が示唆された。Caspaseは細胞死や炎症等において中心的な役割を果たしているが、不活性化を伴う細胞死は我々の知る限り報告されていない。UPPによりcaspase3が分解されている可能性も含め、今後抗NSE抗体によるcaspase3不活性化機構を解明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
15d-PGJ2 により誘導されるアポトーシスではcaspase3活性化とユビキチン化蛋白質蓄積を伴う。一方、抗NSE抗体はユビキチン化蛋白質蓄積およびcaspase3活性をコントロールレベルよりも低下させた。ユビキチン化蛋白質蓄積量の低下は、抗NSE抗体によるUPP活性亢進を示唆している。Caspase3は分解されると不活性化されるので、カスパーゼ分解にプロテアソームがどのように関与しているのかラット大脳皮質神経細胞初代培養系を用いて抗NSE抗体誘導神経細胞死における下記実験を行う予定である。 1)caspase3以外も抗NSE抗体により不活性化されている可能性があるので、抗NSE抗体誘導神経細胞死における各種caspase活性を測定する。 2)ウエスタンブロッティングブロイング等で各種caspase蛋白量を測定し活性と比較する。 3)UPP阻害剤による神経細胞保護効果を検討する。 4)プロテアソームのトリプシン様活性・キモトリプシン様活性・カスパーゼ様活性が変化していないか測定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナによる延長のため当該助成金が生じた。翌年度分として、実験消耗品以外に実験アルバイトへの謝金や成果発表のための旅費等に使用する計画である。
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