2018 Fiscal Year Research-status Report
2次性てんかん予防治療における漢方療法の可能性―脳内炎症の観点からの基礎的検討ー
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17K08356
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
伊藤 康一 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (30291149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 康宏 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (80435073)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重積発作 / 脳内炎症 / サイトカイン / ミクログリア / FACS / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:重積発作(SE)後早期の脳内炎症関連遺伝子が誘導されたため、SE後の脳内炎症関連分子を網羅的に解析した。 方法:SE-モデルは、ICR雄性マウス(8~10 週齢)にピロカルピン(PILO、290 mg/kg, i.p.)を投与し作製した。PILO投与60分以内に5回の全身けいれん発作を確認した後、ジアゼパム(10 mg/kg, i.p.)でSEを終息させた。6時間(N=4)および2日後(N=4)に、血液細胞の影響を除去するためPBSで脳内灌流した後、海馬を摘出しTris/NaCl/Tween20バッファーでタンパク質を抽出、111個の細胞外因子を検出できるMouse XL Cytokine Array Kitで網羅的解析をした。さらに、脳内炎症関連細胞のFACS解析を予備的に検討した。 成績と考察:SE後2日まで炎症マーカーのPentraxin3の発現が顕著に増加していた。SE前と比べSE後に検出可能な20種すべてのサイトカイン発現量が増加し、特にIL-6,17,23,33,TNF-αは4倍以上上昇した。ケモカインも同様にSE後に10種類のケモカイン発現上昇が観察され,特にSE2日でCCL2,5,12,CXCL1,10で顕著であった。この結果は、脳内ミクログリアまたは浸潤マクロファージ/単球の関与が示唆された。そこで、予備的に海馬内のこれらの細胞(CD45/CD11b陽性)をFACSで観察した。この結果、特にSE2日後にマクロファージ/単球の海馬内浸潤が観察された。つまり、SEご早期には脳内炎症が発症し、それにはマイクログリアまたは浸潤マクロファージ/単球が関与しSE誘発サイトカインストームが出現することが示唆された。つまり、SE後早期の脳内炎症のサイトカインストームを制御する(例えば五苓散投与)ことでSE後自発てんかん発作発症を抑制する可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重積発作(SE)後てんかん原性期早期での脳内炎症関連遺伝子が誘導されることを前年度に報告した。本年度の研究では、まだ五苓散の影響に関しては行っていないが、重積直後からの脳内炎症関連分子、特にタンパク質レベルでの変化を抗体アレーを用いたプロテオーム法で網羅的に解析した。その結果から脳内炎症に関与する細胞を調べるためFACS解析の予備的検討を行った。海馬内のこれらの細胞をFACSでCD45/CD11b発現細胞の動態を観察した。この結果特にSE2日後にマクロファージ/単球の浸潤が確認された。一方、PILO誘発重積発作後の脳波に対する五苓散の検討を行っているが、24時間ビデオ脳波装置が1台であるため数例検討できただけである。PILO-SE後の脳波は動物の個体差が大きく解析途中であり、例数を増やしている。
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Strategy for Future Research Activity |
重積後の脳内炎症に関与する細胞動態をFACS解析で明らかにする。重積直後からの五苓散投与の影響を脳内炎症関連遺伝子レベル、分子レベルでの変化をそれぞれ遺伝子解析、抗体アレーを用いたプロテオーム解析法で網羅的に、さらにFACS解析で炎症関連細胞に対する影響を検討する。海馬内のこれらの細胞のFACS解析はCD45/CD11b発現細胞だけの動態を観察しただけであるため、様々の細胞動態(T細胞など)を様々な抗体を用いて検討する。また、対照薬として抗てんかん薬、抗炎症薬も併せて検討する必要がある。24時間ビデオ脳波は、着実に例数を増やすのと、測定期間も自発けいれん発作の有無を調べるために長期間観察することを予定している。
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Causes of Carryover |
研究協力者が産休・育休であったため,研究効率の低下によることが一番の理由である。また、24時間ビデオ脳波装置が一台であるため、実験・計測効率が低く,動物の利用率も低かった。
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Research Products
(4 results)