2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K08381
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
藤本 和久 九州産業大学, 生命科学部, 准教授 (40334718)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド / ヘリックス構造 / 膜透過性 / 酵素耐性 / アポトーシス誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、二つの成果を公表した。 一つは、側鎖間架橋ヘリカルペプチドのカルボキシ末端にD-アミノ酸残基を導入することで顕著な酵素耐性の向上と細胞内活性の上昇が見られたというものである。 具体的にはD-アミノ酸として最も単純なD-アラニンを固相合成法により複数導入することで、側鎖間架橋ヘリカルペプチドがこれまでのエンドペプチダーゼ耐性に加えてエキソペプチダーゼに対する耐性を示した。それに伴い、従来の側鎖間架橋ヘリカルペプチドの持つアポトーシス誘導能も大きく向上することが分かった。酵素耐性の向上が細胞内安定性をもたらし、その結果長時間機能することができたためであると考える。非常に単純な手法で細胞内安定性が改善されたことは、本手法が極めて有用であり、側鎖間架橋ヘリカルペプチドの完成形を目指す上での基盤になることを意味する。また、ペプチド医薬品の機能向上への応用も期待される。 もう一つは、側鎖間架橋ヘリカルペプチドを金基板に固定化し、プローブとして応用するというものである。 金基板に側鎖間架橋ヘリカルペプチドを固定化するに際して、カルボキシ末端を介して金基板に垂直に、もしくは架橋部位を介して金基板に平行に固定化する手法を用いた。今回用いたペプチドのアミノ酸配列はDNA結合能を有し、固定化手法の違いが結合能にどのような影響を与えるかを電気化学的に評価した。電気化学的応答部位として、フェロセンを用いた。現段階でどちらの固定化方法が優れているということは言えないが、今後の研究進捗次第で側鎖間架橋ヘリカルペプチドの細胞外における一つの応用系となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側鎖間架橋ヘリカルペプチドの完成形を構築するに当たって、D-アミノ酸を導入することによって得られた酵素耐性に関する成果は今後の研究を展開していく上で根幹を成すものである。なぜなら、適度な細胞内安定性はペプチド医薬品の実用性を考える上で必要不可欠な要素である。この点に関して目途が立ったということは、当該研究課題が折り返し手前まで来ていることを意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
側鎖間架橋ヘリカルペプチドの完成形の構築を行うにあたって、二つの目標がある。一つは細胞内安定性の向上、もう一つは膜透過性機構の解明である。両者が結実することは、ペプチド創薬における大きな道標になると言える。現在までの進捗状況において述べたように、前者に関してはほぼ目途が立ったので、今後後者に関して取り組んでいく。 今年度は、まずオキシエチレン鎖等で架橋したヘリカルペプチドを合成し、これまでに合成した架橋ペプチドとの膜透過性の違いを評価していく。膜透過性に対して重要なのは、架橋構造なのか、親水性と疎水性のバランスなのか、安定なヘリックス構造なのか、これらが複合的に関係しているのか、はたまた他の要素が関係しているのかを細胞内実験により明らかにしていく。 最終年度においては、アポトーシス誘導のモデル系を用いて側鎖間架橋ヘリカルペプチドの完成形の機能評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、所属機関から支給された金額で足りたため発生しなかった。人件費・謝金に関しては、必要が生じなかったために使用しなかった。その他に関しては、論文投稿費用を必要としなかったために発生しなかった。 今後、細胞内試薬等の高額な試薬が必要となるので、それに充当する予定である。
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Research Products
(6 results)