2017 Fiscal Year Research-status Report
亜ヒ酸毒性発現機構におけるペントースリン酸経路の役割
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17K08391
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 勉 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (00400474)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亜ヒ酸 / ペントースリン酸経路 / リボース-5-リン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒ素は環境汚染物質の一つであり、世界各地でヒ素汚染による健康被害が発生しているものの、その毒性発現に関わる分子メカニズムは不明な点が多い。本申請者は、酵母を用いた環境汚染物質感受性決定因子のスクリーニング法によって、3 価の無機ヒ素化合物である亜ヒ酸に対する感受性決定因子としてペントースリン酸経路に関わる因子を同定することに成功した。本申請者は、酵母において亜ヒ酸がペントースリン酸経路に関わる遺伝子群の発現を抑制し、細胞毒性を示すことも明らかにしているが、ヒト細胞を用いた検討はされていない。平成29年度は、ヒト単球系THP-1細胞を用いて亜ヒ酸毒性とペントースリン酸経路との関係について検討した。亜ヒ酸がペントースリン酸経路関連遺伝子の発現レベルに及ぼす影響を検討したところ、NADPHの産生に関わる酸化的段階関連遺伝子(PGLSおよびPGD)のmRNA発現レベルはほとんど影響を受けなかった。一方、核酸合成に必要な糖の相互変換に関わる非酸化的段階関連遺伝子(RPIAおよびTKT)の発現レベルは亜ヒ酸濃度依存的に低下した。非酸化的段階の主代謝物のリボース-5-リン酸の前駆体であるD-リボースを培地中に添加することによって亜ヒ酸毒性が顕著に減弱された。一方、D-グルコースの添加は亜ヒ酸感受性にほとんど影響を与えなかったことから、亜ヒ酸毒性軽減作用はすべての糖に共通した作用ではなく、D-リボース特異的な作用である可能性が考えられる。以上の結果から、ヒト単球系THP-1細胞において、亜ヒ酸はペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現を抑制することによって細胞の生存に必須なリボース-5-リン酸の細胞内レベルを低下させ、細胞毒性を発現させる可能性が考えられる。今後さらに、亜ヒ酸によるペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現抑制機構を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究により、ヒト単球系THP-1細胞を用いて亜ヒ酸毒性とペントースリン酸経路の関係性について検討し、上記の研究実績の概要で示した結果を得た。当初の研究目標達成のため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階でおおむね順調に研究が進行しているので、平成30年度以降も当初の研究実施計画に基づき研究を遂行していく予定である。平成30年度は、亜ヒ酸によるペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現抑制に関わる転写因子の検索およびその制御機構の解析を行う予定である。また、亜ヒ酸の発癌メカニズムにおけるペントースリン酸経路の関与についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度発注分の遺伝子解析用試薬(siRNAやPCR関連試薬)の納品が次年度初めにずれこんだためであり、当初の予算使用計画を特に変更する必要はない。
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Research Products
(4 results)