2018 Fiscal Year Research-status Report
亜ヒ酸毒性発現機構におけるペントースリン酸経路の役割
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17K08391
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 勉 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (00400474)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亜ヒ酸 / ペントースリン酸経路 / リボース-5-リン酸 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、真核生物モデルとして出芽酵母を用いて亜ヒ酸によるペントースリン酸経路の抑制機構について解析を行った。ペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子(TKL1およびRPI1)の発現調節に関わる可能性がある転写関連因子を酵母データベースで検索したところ、16種の転写関連因子が該当した。これら16種類をそれぞれ欠損させた酵母の亜ヒ酸感受性を検討したところ、7種が亜ヒ酸高感受性を示した。そこで、これら7種の転写関連因子の欠損がペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現レベルに与える影響をリアルタイムPCR法によって解析した。その結果、転写メディエーターであるGal11の欠損によってペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現レベルが低下することが明らかになった。亜ヒ酸によって低下したペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現レベルは、Gal11を欠損させてもほとんど影響を受けないことから、亜ヒ酸がGal11の機能を抑制している可能性が示唆された。我々は、Gal11と結合する転写因子として知られているMig1が亜ヒ酸毒性軽減作用も有することを明らかにしているが、今回の検討によりMig1の欠損がペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の発現を抑制することも判明した。亜ヒ酸がMig1を不活性化することも確認されたことから、亜ヒ酸はGal11およびMig1依存的な転写活性化機構を抑制することによって、ペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子を抑制して、細胞毒性を発揮している可能性が考えられる。また、ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞においても亜ヒ酸処理によってペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子(TKTおよびRPIA)の発現が抑制されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、主に真核生物モデルとして出芽酵母を用いて亜ヒ酸によるペントースリン酸経路の非酸化的段階関連因子の転写抑制機構について検討し、本機構に関与する転写因子を同定することに成功した。また、ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞においても亜ヒ酸がペントースリン酸経路を抑制することが明らかになった。これらの知見はヒト細胞での亜ヒ酸毒性発現機構におけるペントースリン酸経路の役割を明らかにする上で重要な手がかりになると期待されることから、本申請者は当初の目標を向けて「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究で得られた結果を踏まえて、以下のようにペントースリン酸経路抑制による亜ヒ酸毒性発現機構の解明研究を進める。 1) 酵母を用いた検討により亜ヒ酸毒性に関与することが明らかになった転写因子のヒトホモログについて同様の検討し、ヒト細胞における亜ヒ酸によるペントースリン酸経路関連因子の発現抑制機構を明らかにする。 2) 亜ヒ酸によるペントースリン酸経路抑制による細胞増殖阻害に関わる分子メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2018年度発注分の遺伝子発現解析用試薬の納品が遅れ、2019年度に入ってから納品されたため、次年度使用額が生じた。当初の予算使用計画を変更する必要はない。
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Research Products
(6 results)