2017 Fiscal Year Research-status Report
内毒素や抗菌ペプチドなどの生物間の攻撃と防御の物質を利用した感染症創薬シーズ研究
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17K08397
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
川崎 清史 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60270641)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / D-アミノ酸 / エンドトキシン / 免疫刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は他の生物と互いに影響を与えあいながら進化を遂げてきた。その過程で、他の生物を攻撃する物質、他の生物からの攻撃を防御する物質、お互いの生存を助け合う物質が発達した。これらの生物間の攻撃と防御、あるいは助け合いを担う物質は自然が長い時間をかけて作りあげてきた貴重な創薬資源として捉えることができる。このうち、微生物と動物との間で攻撃・防御に関わる物質から有用な創薬シーズを作り出す。本研究では特に内毒素(エンドトキシン)やアミノ酸含有脂質などの細菌に由来する免疫刺激物質と、動物(特に昆虫)の抗菌ペプチドに焦点を当てる。このうち特に以下に焦点を当てた。抗菌ペプチドをD-アミノ酸で合成するとプロテアーゼによる分解を受けにくいために安定化するとされている。また、活性領域を全てD-アミノ酸で合成したD-抗菌ペプチドは抗菌活性そのものがL-抗菌ペプチドよりも高くなる場合がある 。このほか環状化によりペプチド構造が安定化すると活性が強くなる可能性がある。これらのことを前提として抗菌ペプチドの断片ペプチドを合成して活性領域を同定したのちに、これをリード化合物としてアミノ酸配列の改変や安定化の工夫により、有用抗菌ペプチドの作出を行うことを計画している。また、抗菌ペプチドは感染応答において、殺菌だけではなく宿主側に免疫刺激や創傷治癒などの働きをする可能性がある。宿主に対する生理活性についても活性測定系を確立した上で検討する。これらのことの事前準備を本年度は行った。また、内毒素の免疫刺激の応用は本研究の課題であるが、内毒素を阻害するイミダゾリン化合物の作用について発展的に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特定の抗菌ペプチドの活性領域を全てD-アミノ酸で合成したD-抗菌ペプチドは抗菌活性そのものがL-抗菌ペプチドよりも高くなるこれまでの結果があるが、この結果を確認できた。また抗菌ペプチドの宿主に対する生理活性について活性測定系の構築ができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌ペプチドは感染応答において、殺菌だけではなく宿主側に免疫刺激や創傷治癒などの働きをする可能性が示唆されている。この活性についても測定系を確立した上で検討する。一方、医薬品として投与される抗菌ペプチドは機能する前に体内で代謝される可能性があるので安定化が課題である。この点に関してはD-アミノ酸の利用や環状化などの化学的修飾で解決できる可能性がある。このような工夫による安定化も研究課題とする。
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Causes of Carryover |
本研究はこれまでの研究を継続発展させた研究課題である。その中で今年度は次年度以降の準備計画に重点を置いたこと、既存の物品を使うなどの努力によりできるだけ節約した結果、次年度使用額が生じた。次年度使用額を含めて今後も研究費の適正使用に努めていく所存です。
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