2020 Fiscal Year Research-status Report
細菌の2成分転写制御系による多剤耐性化メカニズムの解析
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17K08403
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
小川 和加野 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (90397878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗菌薬多剤耐性 / 2成分転写制御系 |
Outline of Annual Research Achievements |
成分転写制御因子KdrABが多剤排出ポンプKexDとその他の遺伝子発現に与える影響を調べるため、2019年度末に広島大学自然科学研究支援開発センターにてトランスクリプトーム解析用にサンプル調整を行った。得られた結果を解析したところ、kexDとその隣接領域に存在する遺伝子の発現が上昇していた。この結果は過去の実験結果と矛盾しておらず、この実験系の信頼性をサポートするものである。 また、新たにkexDの他、リン酸基の付加やリン酸化体の輸送に関係する遺伝子の発現上昇が認められた。これらの遺伝子と抗菌薬多剤耐性化の間に関連性があるかどうは現時点では不明であるが、KdeABがリン酸化を受けることにより転写制御を行う二成分転写制御系であることから、細胞内でKdrAのリン酸供給などに関係している可能性が考えられる。また、発現が大きく低下した遺伝子には、アミノ酸やフコースなど糖の輸送や利用に関係すると推定される遺伝子が見出された。アミノ酸利用系については現時点ではどのアミノ酸の利用に関わっている遺伝子であるか、同定できていない。別途実施したトランスポゾンを利用した実験において、ヒスチジン合成酵素遺伝子にトランスポゾンが挿入されることにより、KexDの発現低下が観察されている。しかし、これは変異株Em16-1の遺伝子を破壊したものであるため、発現の低下はヒスチジン以外のアミノ酸利用系であると推定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はCovid-19の影響により、通勤停止及びオンライン講義のコンテンツ作成作業に追われ、研究課題に費やす時間が大きく制約された。まとまった時間を必要とするタンパク質発現実験には時間制約の関係で実施することができなかった。 また広島大学自然科学研究支援開発センターにおいても緊急事態宣言などの余波を受け、トランスクリプトーム解析の結果にも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析の分析がプレリミナリーな状態である。2021年度もCovid-19の影響により、研究課題に費やす時間の圧迫を受けている。そのため、断片化された時間でも実施可能なトランスクリプトーム解析の結果整理を優先的に行い、発現変化が観察された主な遺伝子について、それらの基本的な機能解析を目指す。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により、研究実施が大きく制約されたため。
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