2017 Fiscal Year Research-status Report
結晶性インフラマソーム活性化異物の認識機構とスタチンによる制御の解明
Project/Area Number |
17K08406
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
最上 知子 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 主任研究官 (90174333)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフラマソーム / NLRP3 / IL-1beta / スタチン / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
コレステロール結晶・尿酸結晶、カーボンナノチューブやアスベストなど内在性・外来性の結晶性異物はNLRP3インフラマソームを活性化し、動脈硬化、痛風、組織繊維化などさまざまな病態の進展に関わる。研究代表者は、マクロファージでの多層カーボンナノチューブならびに尿酸結晶によるNLRP3インフラマソーム活性化を、HMG-CoA還元酵素阻害薬スタチンが抑制することを発見し、この抑制は異物の細胞への取り込み過程の低下によることを見いだしている。本研究の目的は、これら結晶性異物の認識・貪食を担う細胞膜受容体を同定し、責任受容体のスタチンによる発現・機能の制御メカニズムを明らかにする。さらには結晶性異物がプライミングシグナルを発し、責任受容体が伝達を行う可能性、繊維化シグナルを伝達する可能性を検証することにある。一方、結晶性異物の物理化学的性状の違いによるスタチン応答性の差異を示唆する知見を得たことから、本年度は、コレステロール低下薬スタチンの臨床薬理作用に大きく関わるコレステロール結晶について、インフラマソーム活性化へのスタチンの効果を検証した。コレステロール微小結晶を再結晶と超音波破砕により調製し、THP-1マクロファージに曝露したところ、濃度依存的なIL-1β産生とNLRP3のsiRNAノックダウンによる応答の抑制を確認した。さらに細胞のスタチン処理により、コレステロール結晶によるIL-1β産生の顕著な抑制が示された。この結果は、動脈硬化病巣においてコレステロール微細結晶による炎症誘導をスタチンが抑制する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究所の移転に伴い、実験遂行が可能な時期が限定された。また、異物の物性による応答の差異が示唆されたことから、コレステロール結晶に対するスタチン応答性の検証を、今年度計画実施に先んじて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶性異物によるスタチン応答性の違いが示唆されることから、本研究ではインフラマソーム活性化が最も顕著な多層カーボンナノチューブSD1を結晶性異物モデルとして使用し、その認識・貪食を担い、インフラマソーム活性化をもたらす細胞膜受容体の同定を進める。同定された受容体について、内因性異物であるコレステロール結晶や尿酸結晶の認識・インフラマソーム活性化への関与の有無を検討する。計画通りクラスAスカベンジャー受容体であるMARCOならびにSR-Aの寄与を、siRNAノックダウンならびに抗体を用いて検討し、スタチンによる制御メカニズムを解析する。関与が認められない場合には、他クラスのスカベンジャー受容体の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究所移転に伴う実験計画の遅延と一部の支払が平成30年4月に繰り越されたために生じた。計画遂行のための消耗品購入に充てる予定である。
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