2017 Fiscal Year Research-status Report
セロトニン異常による薬物消化管吸収挙動の変動機構解析
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17K08414
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60284080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河原 賢一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30291470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸神経系 / セロトニン代謝異常 / 消化管吸収 / 粘膜透過 / 経細胞経路 / 細胞間隙経路 / 膜抵抗値 / 水溶性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
セロトニン(5-HT)代謝異常を含む腸神経系(Enteric nervous system; ENS)の機能異常は、様々な消化管疾患に関わっている。中でも炎症性腸疾患、過敏性腸症候群においては5-HTの分泌亢進が知られており、セリアック病、カルチノイド発症時に見られる消化器障害では、粘膜中5-HTが亢進している。しかし、5-HTレベル亢進時における薬物吸収挙動に関しては検討例がほとんどない。申請者らは、既に5-HTの代謝酵素monoamine oxidase Aをclorgylineにより阻害することで小腸粘膜内5-HT含量の高い5-HT代謝異常モデルラットの作製に成功している。本研究では、同モデルラットを用いて、高5-HTレベルが、様々な吸収特性を持つ薬物の吸収性にどのような変化を及ぼすかを明らかにすることを目的に種々の検討を計画している。本年度は、5-HT代謝異常モデルラットから単離した小腸粘膜を用い、受動拡散により吸収される薬物について粘膜透過性を評価した。経細胞経路を介した吸収変動の可能性については、主として経細胞経路を介して吸収されると考えられているantipyrineを用いて膜透過性を検討した。その結果、空腸、回腸、いずれの部位においても対照群との間に差は認められなかったことから、経細胞経路を介した薬物吸収には変動はないものと考えられた。一方、細胞間隙経路を介した吸収変動の可能性については、主として細胞間隙経路を介して吸収されると考えられている水溶性高分子FITC-dextran 4(FD-4, 分子量約4000)を用いて検討した。その結果、空腸、回腸、いずれの部位においてもFD-4の透過が有意の亢進することが明らかとなった。また、同様に単離した小腸粘膜を用いて膜抵抗値を測定したところ、空腸、回腸、いずれの部位においても低下傾向が認められた。このことから、5-HT代謝異常ラットの小腸粘膜では、tight junction構造の変化により、細胞間隙経路を介した高分子の吸収が増大することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画した通り、5-HTとclorgylineを前投与することで作製した5-HT代謝異常ラットから単離した小腸粘膜を用い、受動拡散により吸収される薬物について膜透過性を検討し、経細胞経路を介する薬物吸収には変動がないこと、一方、細胞間隙経路を介する高分子物質の吸収は増大することを明らかにすることができた。また、膜抵抗値が低下していることも明らかとなったとから、tight junction構造の変化によるものであることも示唆することができた。 また、PEPT1を介した吸収に関しても、cephalexinを用いた検討に着手しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、作製した5-HT代謝異常ラットを用い、吸収性変動の可能性を検討していく。具体的には、PEPT1を介した吸収の寄与が考えられているcephalexin(CEX)を基質として、その吸収性に変化があるかいなか明らかにするとともに、変動があった場合にはその原因の解明に着手する。
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Causes of Carryover |
細かな端数が出たため、翌年度分と合算して、有効に利用することとした。
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