2017 Fiscal Year Research-status Report
簡便で効率的な3次元液滴培養法をヒト多機能分化誘導細胞へ応用する薬物相互作用研究
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17K08426
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村山 典惠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90219949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 浩史 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (30191274)
清水 万紀子 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90307075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | iPS / チトクロムP450 / 培養時間 / 培地組成 / ヒト肝由来HepaRG cells |
Outline of Annual Research Achievements |
肝薬物代謝実験では、従来より初代培養肝細胞が使用されている。しかしその細胞の代謝能については、ドナーの肝薬物処理能力に依存することから、ロットによって差が生じることが指摘されている。さらに初代培養肝細胞系は、数量的な供給の不安定性が問題となっている。そこで、近年心筋細胞などへの分化誘導が報告されている、ヒトiPS細胞を用いた薬物代謝酵素活性測定系探索が盛んになっていることからヒト肝への分化誘導と細胞の特徴について酵素活性の点から検討を行った。ヒトiPSに関して今回はリプロセルより購入し、推奨される市販培地を用いて、培養時間経過に伴った肝薬物代謝酵素活性の変動を検討した。P4501A2, 2C9 2C19, 3A4,及び2D6の指標基質を用いた検討の結果、4週間目までの活性測定の結果、分子種ごとに特徴的な変動が認められた。この変動は、mRNAレベルの変動を伴っていた。興味深いことに、初代培養肝細胞系やヒト肝癌由来HepaRG細胞について、基底レベルで発現が低いとされているP4502C9に関して、今回の培養では、3週間目で最も高いmRNAレベルを示した。また、P4503Aや2Bの誘導に関与している核内受容体のPXRの発現についてRNAレベルで検討を行ったところ、培養時間内で定常的な発現が認められていることから、ヒト初代培養肝細胞系と同様に、薬物代謝酵素の誘導作用を検討するうえでiPS細胞系の活用が期待できる。 以上の結果から、ヒトiPS細胞の薬物代謝酵素活性は、これまで用いられてきたヒト肝株価細胞と同様にヒト肝の各種薬物代謝に関する検討を行う上で、有効な手段となりうることが示唆された。本研究はJ. Toxicol. Sci. 2018;43:241-245に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞の入手に関して、様々なメーカから提供されているため、選定には少し時間を必要とした。他の培養細胞とは異なる条件での培養となったので、培地組成についても検討を行い、各種培地の組成に関しても比較しより良い条件を選定を行った。今回の検討結果から、考慮すべき培養条件についてある程度はあくできたことから、今後の研究の進行が円滑になることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえて、典型的な肝薬物代謝酵素誘導剤に対する応答性について、培養条件・培養日数について検討を行っていく予定である。培養条件の中で、肝薬物代謝酵素の発現に影響する要因として、内因性ホルモンレベルを含めて影響の大きい要因について検討を行っていく。得られた結果をもとに、総合的な薬物代謝酵素の評価系を確立していく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた試薬について、国内在庫がなく本国(アメリカ)において、現在調整中とのメーカーからの知らせがあったが、結局今年度内に届かないことになり、やむなく購入を見送ったために、その分の余剰が生じてしまった。来年度に再度購入を検討する予定であるため、来年度分の経費と合わせて実験計画を立てている。
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