2018 Fiscal Year Research-status Report
特異体質性肝障害にアシルCoAチオエステル中間代謝物は関与しているか?
Project/Area Number |
17K08432
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
岩城 正宏 近畿大学, 薬学部, 教授 (30140346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 篤史 近畿大学, 薬学部, 准教授 (80411578)
島田 紘明 近畿大学, 薬学部, 助教 (40783444)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CoAチオエステル体 / NSAIDs / 肝障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)の反応性代謝物の一つであるアシルCoAチオエステル (CoA)体の薬物誘発性肝障害発症要因としての寄与の有無を明らかにすることを目的とした。昨年度に引き続き,ラット肝ミクロソーム中におけるジクロフェナク (DIC)やメフェナム酸 (MEF)などのCoA体生成を検討したが,CoA体の生成を検出できなかった。そこで,アシルCoA合成酵素 (ACS)活性を利用して脂肪酸を定量するラボアッセイNEFAを用いて,オレイルCoA生成に対するNSAIDsの阻害活性やNSAIDsのCoA体生成について検討した。その結果,DICやMEFはオレイルCoA生成をわずかに阻害する一方で,イブプロフェン (IBU)やケトプロフェン (KET)は阻害しなかった。また,DICやIBUのラボアッセイNEFA 中でのCoA体生成は確認できなかった。したがって,NSAIDsのCoA体の生合成は現在まで確認できていない。CoA体と同様に肝毒性への寄与が大きいアシルグルクロン酸抱合体 (AG体)について,加水分解酵素による分解のされやすさが毒性に与える影響についても引き続き検討している。さらに,薬物誘発性肝障害発症機序の解明に向けたアプローチとして,マウス肝細胞とクッパー細胞の共培養系を用い反応性代謝物の生成とマクロファージの毒性発現への関与を検討している。LPS刺激100 ng/mlにおいてCyp3A mRNAの低下がみられ,反応性代謝物産生の変動が生じる可能性が考えられ,共培養下でクッパー細胞のLPS刺激濃度に留意する必要があると考えられる。また,肝細胞/クッパー細胞比1 : 0.4での共培養でジクロフェナク (DIC)高濃度による細胞障害を増強させる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACS発現細胞の構築に先立ち,ラット肝ミクロソームやラボアッセイNEFAを用いてNSAIDsのCoA体生成を検討したが,NSAIDsのCoA体の生合成は現在まで確認できていない。AG体の加水分解酵素と毒性の関係については,昨年度まで検討していたIBF,ZOM,DIC,IBU,MEFに加えて,市場撤退群としてTOLやルミラコキシブ (LUM),警告群としてETOを追加検討した。市場撤退群のうち,IBF,ZOM,TOLのAG体は警告群と比較してラット肝ミクロソーム中で加水分解酵素により分解されやすかった一方で,LUMは警告群と同程度であった。また市場撤退群であるIBF,ZOM,TOL,LUMおよび警告群のDICのAG体は,その他のNSAIDsのAG体と比較して非酵素的に分解されやすいことから化学的に不安定であることが推察された。肝細胞/腹腔マクロファージまたはクッパー細胞共培養系を用いDICによる細胞毒性における反応性代謝物産生および免疫系の関与を検討した。共培養系でDIC添加時の反応性代謝物であるDICグルクロン酸抱合体の産生と細胞毒性について検討したところ,これまでに報告されている炎症条件下の肝細胞とマクロファージ比(およそ1 : 0.4)での共培養条件でグルタチオン枯渇によりLDH漏出量が有意に上昇するとともに細胞内ATP含量が有意に低下することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
NSAIDsのCoA体については現在まで,肝ミクロソーム中やラボアッセイNEFA中で生合成が確認されない。そこで今後はCoA体を化学的に合成して,リン酸緩衝液中や肝ミクロソーム中での分解速度や,タンパク質との共有結合体の形成能について評価する。また,これまでに毒性の強いNSAIDsほどAG体が加水分解酵素により分解されやすいことが示唆されている。今後はAG体の分解に寄与する加水分解酵素の種類について検討するとともに,NSAIDsごとに加水分解酵素の活性低下時における肝・腎組織へのAG体の蓄積しやすさを評価して,NSAIDsによる特異体質性毒性発症におけるAG体加水分解酵素の意義を検討する。共培養系では,これまでマウス肝細胞と腹腔マクロファージまたはクッパー細胞を用い検討しており,グルクロン酸抱合体の毒性発現への関与が示唆された。第2相代謝酵素は細胞株においても維持され,マクロファージのタイプによる影響も考察する必要があるため,ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞とヒト単球由来細胞株THP-1細胞を用い検討を進める予定である。その際にCoA体生成についても測定を試みる。また,DIC以外の薬物についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
試薬購入費および学会出張費が当初計画より安く抑えられたため、次年度使用額が生じた。次年度の試薬購入に用いる予定である。
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Research Products
(6 results)