2019 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群合併骨髄性白血病の治療反応の多様性解明の研究
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17K08443
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
多賀 崇 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30273410)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 白血病 / 小児 / 薬剤感受性 / ダウン症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダウン症候群に発症した新生児一過性白血病(TAM)、急性骨髄性白血病(ML-DS)の発症時、寛解導入不能時ならびに再発時の白血病細胞の薬剤感受性試験を行い、これらの疾患に有用な薬剤を模索することが最終目的である。研究3年目の令和元年度は、当初のWST8法から変更したCell Titer Groによる測定により、症例の蓄積をすることを予定していた。 滋賀医科大学ならびに神奈川県立こども医療センターで診療され本研究への同意が得られたTAM5症例に対し41種類の薬剤に対する感受性試験をCell Titer Gro法で行った。従来の報告にあるようにTAMの病的細胞においては抗白血病薬として実臨床で用いられているcytarabineに加え、dexamethasoneやMEK阻害薬trametinibに高感受性がみられた。Trametinibの効果は、TAM細胞数が多い症例でより感受性が高かった。Trametinibは新規薬剤として有望であるとともに、TAM細胞がRAS/MEK pathwayを介して増殖をしていることが示唆され、TAMの背景因子である21番染色体のトリソミー、GATA1変異との関連、後に発症しやすい白血病との兼ね合いと合わせて大変興味深い。 最大の目的であるML-DS症例の検討は、自施設で該当症例がなく、また本邦での多施設共同の臨床試験が始まったばかりであったことから検体収集が難しく、実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の遅延は、研究費申請時に行うアッセイ方法を、WST8法からプロメガ社のCell Titer Groによる測定に変更したこと、症例集積が思うようにいかなかったことによる。 しかしながらCell Titer Gro法を用いた凍結検体でTAMにおいて薬剤感受性試験を行い、従来から知られているcytarabineに加え、Dexamethasoneや分子標的薬であるMEK阻害薬trametinibに高感受性を有する症例がみられたことは新たな知見である。この成果は、第61回日本小児血液・がん学会(Yokosuka T, Taga T, et al, In vitro testing of Trametinib in Transient Abnormal Myelopoiesis, 2019年11月14日―16日、広島)で口演発表した。 一方、最大の目的であるML-DSの初発ならびに再発例での検討ができなかった。ML-DSは希少疾患である上に、臨床研究が始まったばかりで検体収集が困難であり、やむを得ない部分もあるが、全く検討できなかったのは想定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
Cell Titer Gro法によるアッセイの測定機器であるGloMaxが高価で本学での購入は困難であること、凍結検体によるアッセイで信頼性のある結果が得られることから、今後も引き続き、神奈川県立小児医療センターに測定試薬などの物品ならびに凍結検体を持参して、該当症例(TAM、初発ならびに再発ML-DS)の白血病細胞の薬剤感受性の測定を行う。すでに測定を行ったTAM 5例については、今後ML-DSを発症する可能性があり、その場合には連続的に薬剤感受性試験を行い、経時的変化を検討する。学会発表を行ったTAM症例については症例追加や遺伝子解析などを検討したのち、論文化する予定である。さらにTAMならびにML-DSの全国的な前方視的臨床試験がすでに開始されたことから、それらの参加施設とも連携をとり、余剰検体を利用するなど検体収集し、測定を行い本研究の目的を達成したい。
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Causes of Carryover |
当初の計画より、症例の集積がうまくいかず、研究の円滑な遂行ができなかった。そのため、薬剤感受性を行うためのCell Titer Groなどの試薬を含めた消耗品の購入が少なくなった。次年度は、症例集積に努め、本研究を遂行する予定である。
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