2019 Fiscal Year Research-status Report
薬剤師の行動心理に基づく調剤エラーのメカニズム解明と実臨床への応用
Project/Area Number |
17K08447
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 敏和 九州大学, 大学病院, 副薬剤部長 (80791748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アイトラッキング / 調剤エラー / 視線動向 / エラーメカニズム / 薬剤師 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究において、大型スクリーンにより原寸大の調剤現場を再現し、アイトラッキング(eye-tracking)手法を用いて、薬剤師12名の調剤時の視線動向について「どの薬剤を」、「どのタイミングで」、「どのような順序」で確認するのかを検証した。 アイトラッキングで得られる眼球運動は主にfixation、saccadeに分類され、fixationは視点がある範囲内に一定時間留まる状態(注視)を意味する。また、saccadeは高速に移動する眼球の動きである。本研究では、プロジェクターから投影されるスクリーン画面の座標を左上(0、0)、右上(1280、0)、左下(0、960)に設定し、アイトラッカで得られるX、Y軸上の視点座標に対して、fixation、saccadeの判定を行った。また、スクリーンの上部・下部をそれぞれ薬棚領域(縦80cm×横160cm)と処方領域(縦40cm×横160cm)とし、一連の調剤プロセスを1つのスライド内で検証できるようにした。そして、2種類の規格を有する「規格薬(12薬剤)」と1種類のみの規格を有する「単独薬(3薬剤)」を対象とし、それらの配置方法・配置場所に応じた処方領域の処方注視(回数)、薬棚領域の薬剤注視(回数)、処方領域-薬棚領域間の視線の上下移動(回数)および視線の移動距離(m)、調剤時間(秒)などの関係を解析した。 検証の結果、薬剤師の「認識(注視)と行動(指差呼称)」という観点から、調剤時における対象薬剤の確認手順や調剤エラーの発生要因を解明することができた。例えば、2種類の規格薬の調剤では双方の右斜め上の配置方法でエラーが少なくなること、調剤の煩雑性は「単独薬<規格薬」かつ「左面領域<右面領域」の関係となることが示された。さらに、薬剤の配置場所に応じて調剤手順を変更しようとする薬剤師の行動心理の一つを解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度の進捗状況としては、当初の計画通り順調に進行しており、アイトラッキング(eye-tracking)手法を用いた検証を薬剤師12名で実施した。また、令和元年度に、日本医療薬学会の雑誌である「医療薬学」に本研究成果を投稿し、受理されている(アイトラッキング手法を用いた薬剤師の視線動向に基づく調剤エラーの発生メカニズムの解明,医療薬学, 39(9): 493-503, 2019)。さらに、令和元年11月に開催された第29回日本医療薬学会年会においても口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、本研究で得られた結果および過去に得られた研究成果をまとめた内容について、令和2年7月開催予定の医療薬学フォーラム2020/第28回クリニカルファーマシーシンポジウムでポスター発表を行う予定である。さらに、本研究で得られた結果については、令和2年9月開催予定のFIP(80th FIP World Congress of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, Spain)でも、あらためてポスター発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究では追加検証の必要性がなかったため、1,621,164円の次年度使用額が発生し、研究成果(論文)の投稿料、掲載料、英文校正などに333,301円を使用した。令和2年度は、本研究を含むこれまでのエラー解析研究に関する国内学会発表(7月)、および本研究内容に関する国際学会発表(9月)の経費として使用する予定である。
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