2019 Fiscal Year Research-status Report
物性と生物薬剤学的特性を基盤とした薬剤性光線過敏症機序の統合的理解と評価系構築
Project/Area Number |
17K08453
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
尾上 誠良 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00457912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光線過敏症 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤性光線過敏症は特定の薬物を摂取後に,太陽光に露光することによって惹起する皮膚や眼の異常反応であり,主に 3 つのタイプ(光刺激,光アレルギー,光遺伝毒性)に大別される.創薬段階での本副作用回避が強く望まれているが,その発症機序解明は不完全であり,さらに光アレルギーや光遺伝毒性に関する有用な in vitro 評価系は未だに乏しい.研究代表者は独創的な着想によって光反応性評価ツールとして reactive oxygen species (ROS) assay を創出し,本評価系は ICH S10 ガイドラインに本邦初の ICH 推奨安全性試験法として採用された (2014 年).本研究は ROS assay データを基盤とする医薬品の物性と生物薬剤学的情報に着目して光毒性機序を網羅的に解明するとともに,得られる知見を基盤とした新規評価系構築を戦略的に進めるものである.本研究では “光刺激性” “光アレルギー” そして “光遺伝毒性” の各種リスクを特異的に予測するため,励起された光毒性化合物と各種光毒性反応に関連する生体内分子との相互作用を明らかにした.各光毒性反応に関与する生体内分子として (i) 膜タンパクならびに脂質(光刺激性),(ii) 血漿タンパク(光アレルギー),そして(iii) DNA(光遺伝毒)を選択し,基底状態ならびに光励起状態の被験物質とこれらの生体内分子との相互作用を網羅的に精査した.生体内分子の酸化や高次構造変化,励起化合物との結合特性を分光学的アプローチ,キャピラリー電気泳動法,DNA-photocleavage assay,DNA-binding assay 等の in vitro スクリーニング系を用いて探求した.これらのデータと臨床の光毒性情報を解析し,各種光毒性反応に深く関与する決定因子を特定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した計画通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
未だ確実な評価系に欠ける光安全性評価を可能とするため,特に光アレルギーならびに光遺伝毒性等,これまで評価が極めて困難であった種類の光毒性リスクを特異的に予測できることによって,創薬段階における光毒性リスク回避に結実させる.また,開発した試験法を多くの化合物に適用してデータを蓄積することで,各種光毒性反応を誘発しやすい化合物の構造上ならびに物性上の特性が明らかとなり,各種光毒性反応に関する structural alert を新たに提示でき,医薬品・化粧品・食品をはじめとする新規化学物質の創製において極めて有用な情報を世界に向けて共有可能となると確信する.
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Causes of Carryover |
研究をすすめていく過程で,当初予想していなかった物理化学的特性と光毒性の関連性を示唆する貴重なデータをえた.この仮説を明らかにするために追加実験が必要となり,それ故次年度に検証実験用の費用を残すこととした.
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Research Products
(8 results)