2019 Fiscal Year Research-status Report
Database for variation of pharmacokinetic and pharmacodynamic parameters in various diseases
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17K08470
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 賢二 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00396673)
岡 美佳子 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (50255379)
杉山 雄一 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 特別招聘研究員 (80090471)
桑原 隆 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (90786576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 個体間変動 / 母集団薬物動態解析 / カルバマゼピン / 生理学的薬物動態モデル / 有機アニオントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
抗てんかん薬の個体間変動について検討した。カルバマゼピンの患者における母集団薬物動態解析(PPK)およびモデル非依存的な解析から求めたクリアランスの変動をそれぞれ収集し比較したところ、どちらも健康成人におけるCYP3A4活性の個体間変動値(33%)とほぼ一致した。このことは酵素誘導後も個体間変動が変わらないことを意味する。本成果を薬物動態学会にて報告した。 疾患時の個体間変動を推定する上で、トランスポータの活性変動は重要である。まず、健康成人における変動値を求めることとした。抗糖尿病薬レパグリニドの肝取り込みトランスポータOATP1B1の活性変動について、腸肝循環を考慮した数理モデルを用いて、AUCの報告値から推定したところ、その活性変動は20~30%であった。また、腎臓の尿細管分泌に関与するトランスポーターとして有機アニオントランスポータOAT1に着目し、プローブ基質であるアデホビルとその阻害剤プロベネシドの生理学的薬物動態(PBPK)モデルを構築し、OAT1の活性変動を求めたところ約40%であった。本成果を臨床薬理学会にて報告した。 胎児への薬物曝露の変動について検討するため、まず、抗糖尿病薬メトホルミンの胎盤における薬物動態モデルを構築した。ヒト胎盤は出産後に採取しやすい臓器であり、ex-vivoによる血液-胎盤関門における薬物輸送について報告が多い。これらのデータを用い、メトホルミンの胎盤のPBPKモデルを構築した。本成果を薬物動態学会にて報告した。 標的蛋白への結合が薬物動態に影響を及ぼす場合、薬効にも変動が反映されるものと考えられる。まず、抗糖尿病薬であるDPP-4阻害薬リナグリプチンの薬物動態の非線形性とその薬物のDPP-4への解離定数を組み入れたPBPKモデルを構築することにした。本成果を国際科学誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始時には、疾患特有のPK/PDの変動を推定すべく、平成 32 年度までに、胃潰瘍薬、抗精神病薬、抗菌薬、抗糖尿病薬等において疾患領域特有の薬物動態パラメータについて検討し、PDの変動についても検討する。としていた。 これまで、既報の胃潰瘍薬のPPKモデルの検討では、共変量の分布について記載がない事例が多く、再構築したモデルのシミュレーション値と観測値に解離が見られたこと。一方で、抗菌薬におけるPPKモデルの検討結果から、ガイドラインにおけるTDMの情報および、他文献や人口統計から得られた分布を共変量に適用することにより、ある程度再構築した血中濃度データの妥当性が得られたこと。さらに、PPKのベースモデルの情報が開示されていれば、そのパラメータを収集することによって、比較的精度高く当該患者のCLデータを再現できることが分かってきた。 この成果として、抗てんかん薬カルバマゼピンのPPKモデル情報を収集し、これらのモデルを再構築した上でCLの変動を統合し、てんかん患者におけるCYP3Aの活性変動を得ることに成功した。この変動値はモデル非依存的解析の結果と良く一致している。 抗糖尿病薬のPK/PDの変動については、DPP-4阻害薬、メトホルミン、レパグリニドについて検討しているものの、変動を求める前段階のPBPKを含めたモデルの構築および健康成人におけるトランスポーター変動値の推定に留まっている。 一方、PPK-PBPKモデルの構築によりトランスポーター活性の変動を推定するという新たな試みが為され、腎尿細管のOAT-1の変動値が得られているが、更なる確認が必要である。 以上、検討した薬剤は少ないものの、問題点が明らかにされ打開策の成果も得られていることから、総合的に評価した上で、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
PPK解析データからCL等のデータを再構築する段階において、共変量の分布の情報の不足および多くの既報のPPKモデルでは共変量に個体間変動が設定されずにCLや分布容積の個体間変動で説明していることなど、本研究遂行上、障害となる要因について明らかになってきた。そしてその一部は、ベースモデルの情報を用いることにより解決できることが示された。カルバマゼピンを通じて得られた酵素誘導条件下における個体内変動の検討結果から、ベースモデルが開示されている論文情報を収集することにより、患者集団の変動を概ね推定できることが、確認されている。令和2年度には、この共変量の分布の問題点およびその解決策について、感度分析等の手法を用いて検討し、明らかにする予定である。 また、現在までに検討されている領域は、胃潰瘍薬、抗菌薬・抗ウイルス薬、抗てんかん薬、抗糖尿病薬であるがいずれも検討した薬物の事例は多くはない。さらにPDの変動については、データベース化するに価する情報は、酵素誘導以外は得られていない。 代謝酵素の活性変動については概ねデータベース化されているが、トランスポーターの活性変動の報告は少ない。本研究においてOATP1B1の活性変動は明らかになった。またOAT1の変動値が得られ、本年度においては、この値を確認するとともにOAT3の変動値も、基質としてベンジルペニシリンを用いることにより同様のPBPK-PPKモデルを用いた方法により得られる予定である。 本研究を通じて、多くの新知見が得られてきた。その一方で新たな研究項目も生まれてきている。令和2年度は、本研究をまとめるとともに、今後、継続すべき研究項目を明確にする予定である。また、本研究最終年度であることから、公表についても検討・実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は、PBPK-PPK解析を実施するための高性能コンピュータを1台購入したが、解析すべき項目も増え、さらに大学院生も増えたことから、令和2年度には高性能コンピュータをさらに追加購入(490千円)する予定である。申請時に計画した予算も調整し、PK/PD解析ソフトウェアー(NONMEM 2パック)、薬物動態解析・計算ソフトウェアー(MATLAB等)のライセンス料として450千円、印刷用消耗品30千円、図書20千円を使用予定である。また、旅費として薬物動態学会および臨床薬理学会等の参加費として200千円およびを論文投稿費200千円を予定している。分担研究者には、情報提供のための基礎データ収集及び解析費として杉山雄一氏に100千円、情報収集および解析費用として桒原隆氏、岡美佳子氏および岡田賢二氏にはそれぞれお50千円配分する。
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