2018 Fiscal Year Research-status Report
糸球体から漏出したアルブミンに結合する脂肪酸及び薬物の腎尿細管移行特性と影響解析
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17K08475
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
永井 純也 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (20301301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 裕美子 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (50805299)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腎近位尿細管上皮細胞 / HIF-1 / アルブミン / アラキドン酸 / シクロオキシゲナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、腎近位尿細管上皮細胞にアルブミンを処理することによって誘発されるHIF-1活性化におけるアラキドン酸の関与とシクロオキシゲナーゼ阻害薬の影響について検討を進めた。 我々は既にアルブミンを負荷したヒト腎近位尿細管上皮細胞株HK-2における低酸素誘導因子HIF-1の活性化に加え、そのHIF-1活性化はアルブミンに結合する脂肪酸が重要であることを報告し、アルブミン分子自体ではなくアルブミンに結合している脂肪酸がHIF-1を活性化する可能性を示唆している。そこで、アルブミンに結合している脂肪酸の一つであるアラキドン酸に着目することとし、アラキドン酸処理によるHIF-1活性化機構及びその活性化におけるシクロオキシゲナーゼ阻害薬処理の影響について検討した。 その結果、脂肪酸が除去されたアルブミンにアラキドン酸を加えた培地で処理することにより、HIF-1標的遺伝子であるGLUT1及びABCG2/BCRP mRNAの発現誘導が認められた。さらに、GLUT及びBCRPの輸送活性が上昇し、これらトランスポーターの機能面においても上昇が観察された。一方、アラキドン酸処理時にシクロオキシゲナーゼ阻害薬インドメタシンを共存させると、アラキドン酸処理で観察されたGLUT活性の上昇は低下した。また、別のCOX阻害薬であるイブプロフェンを併用した場合にも、インドメタシンの場合と同様にアラキドン酸誘発GLUT活性化は低下することが認められた。 以上の結果より、アラキドン酸誘発HIF-1活性化にはシクロオキシゲナーゼによるプロスタグランジン生成が関与している可能性が示唆された。しかし、HIF-1αの発現上昇および細胞内局在変化などを確認できていなため、プロスタグランジンの関与の可能性を明確にするためにはさらなる解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HK-2細胞にアラキドン酸を処理することによって認められるGLUT介在性輸送の活性化がシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤処理によって低下したことから、タンパク漏出に伴う腎障害の新たな発症機構としてCOXが関与する興味ある知見が得られたと考えているが、まだ押さえるべき点も多く、研究課題の進捗状況としては上記とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、脂肪酸が結合している通常のアルブミン処理で観察されるHIF-1活性化においても、プロスタグランジンの関与が認められるかを明確にすることを考えている。それを示すために、アラキドン酸処理におけるHIF-1α発現変動についてウエスタンブロットおよび免疫染色解析などを行うとともに、脂肪酸結合型アルブミン誘発HIF-1α発現に及ぼすCOX阻害薬(インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナックなど)の影響を調べることを予定している。さらに、脂肪酸結合型アルブミン処理時おけるプロスタグランジンの産生やCOX阻害薬併用時のその変動などを調べるための定量解析も行うことも計画している。
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