2017 Fiscal Year Research-status Report
HLAの関与する解熱鎮痛薬誘因性重症薬疹の初期発症メカニズムの解明
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17K08482
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
岡本 好海 (内田) 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 任期付研究員 (40716792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋井 則貴 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 室長 (20425672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS) / 中毒性表皮壊死症(TEN) / HLA / 重篤副作用 / ペプチド / 解熱鎮痛剤 / 抗てんかん薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は免疫系を介する重篤副作用である。近年、被疑薬毎にSJS/TEN発症と関連するヒト白血球抗原(HLA)多型があることが明らかとなってきた。低分子薬物が異常免疫応答を誘導する機序としては、薬物が体内のタンパク質に結合し抗原性を得るというハプテン仮説の他に、薬物が免疫系の受容体と直接相互作用するというp-i仮説、薬物がヒト白血球抗原に提示されるペプチドの種類を変えるというAltered peptide repertoire仮説が提唱されている。本研究では、HLAとの関連が明らかとなっている複数の被疑薬とHLAの組み合わせについて、発症機序の解明を行うことを目的とした。今年度は、1)分子間相互作用解析装置Octetを用いた関連HLAタンパク質と被疑薬との親和性評価、及び2)可溶性HLA発現C1R細胞とLC-MSを用いたHLA提示ペプチドの網羅的解析を行った。 まず分子間相互作用解析に供するため、リコンビナントのHLA及びβ-2-Microglobulin(B2M)にペプチドをFoldingさせ、安定な複合体を得た。この複合体と薬物を用いて、Octetによる薬物-HLA複合体相互作用解析プロトコルを確立した。また、可溶性HLAを発現するC1R細胞から、HLA-B2M-ペプチド複合体を精製するプロトコルを確立した。この系を用いて、HLA-A*02:06、HLA-B*15:02、HLA-B:51:01提示ペプチドをそれぞれ1,000種類以上同定した。薬物処理により、提示ペプチドの各ポジションに配置される各アミノ酸の頻度が変化するか否かを検証した。また、薬物処理により特徴的なペプチドが提示されるようになるか否かを検証した。その結果、特定の被疑薬とHLAの組み合わせでは、薬物依存的に、異常なペプチド提示が誘導されることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低分子薬物が特定のHLA型を介し異常な免疫応答を誘導する分子機構として、薬物が免疫系の受容体と直接相互作用するというp-i仮説、薬物がヒト白血球抗原に提示されるペプチドの種類を変えるというAltered peptide repertoire仮説が考えられる。 このうち、分子間相互作用解析によりp-i仮説を、可溶性HLA発現C1R細胞を用いた実験によりAltered peptide repertoire仮説を検証することが出来た。また当初の予定では、重症眼障害併発性解熱鎮痛剤誘発性SJS/TENについて、関連HLAタンパク質との親和性評価や提示ペプチド解析を行う計画であったが、解熱鎮痛剤以外の薬剤を原因とするSJS/TEN発症機構についても研究が進み、興味深い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
HLAと薬物の分子間相互作用解析については、特異的な結合が確認できていない。この結果から、p-i仮説以外のメカニズムが示唆される。しかしながら、本実験では、特定のペプチドとFoldingさせたリコンビナントHLAを用いている。そのため、ペプチドの配列に依存的な現象を見逃している可能性が残る。この可能性を排除するため、今後は、他の配列のペプチドを用いてFoldingさせたHLAを用いて検証実験を行う。 Altered peptide repertoire仮説の検証実験では、SJS/TENの原因薬物により、HLAタンパク質が特殊なペプチドを提示しうることを示唆する結果を得た。今後、この結果を検証するとともに、実際に薬物により特徴的なペプチド提示が起こることを大腸菌から精製したHLAタンパク質と合成ペプチドを用いてin vitroで検証する。
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Causes of Carryover |
HLA提示ペプチド解析の条件検討において、当初の予定では、繰り返し条件検討を行う予定であったが、想定していたよりも早い段階で良好な結果を得ることができたため、質量分析に関わるカラム等の支出を抑えることが出来た。 本年度行った実験から、薬物依存的に特殊ペプチドの提示が誘導される可能性が示唆されたため、繰り越し分については、HLAの特殊ペプチド提示能をin vitroで検証する実験に使用する。
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[Journal Article] The Medication Risk of Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis in Asians: The Major Drug Causality and Comparison to the USA FDA Label.2018
Author(s)
Wang YH, Chen CB, Tassaneeyakul W, Saito Y, Aihara M, 他7名, Okamoto-Uchida Y, Man-Tung Cheung C, Huang JW, Ji C, Cheng B, Chung-Yee Hui R, Chu CY, Chen YJ, Wu CY, Hsu CK, Chiu TM, Ho HC, Lin JY, Yang CH, Chang YC, Su SC, Wang CW, Chung WH; Asian Severe Cutaneous Adverse Reaction Consortium
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Journal Title
Clin Pharmacol Ther.
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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