2018 Fiscal Year Research-status Report
大規模コホートを用いた抗てんかん薬多剤併用時の有害事象発生リスクの解明
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17K08483
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Research Institution | National Epilepsy Center, Shizuoka Institute of Epilepsy and Neurological Disorders |
Principal Investigator |
山本 吉章 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (60596245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリファーマシー / てんかん / 有害事象 / 薬物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,日本の医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっている.この中でも難治てんかんは発作を抑制するために,複数の抗てんかん薬を長期間服用する必要があり,有害事象のリスクマネージメントが極めて重要である.国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターにおいて2,000~5,000人規模のコホートデータを利用し,抗てんかん薬による高アンモニア血症と脂質異常症の発症リスクを明らかにしてきた.本研究は2006年1月から2017年12月までに静岡てんかん神経医療センターを受診した患者を対象とした大規模コホートデータを構築し,抗てんかん薬による薬疹,血液障害,電解質異常,肝障害の発現率とその危険因子を明らかにすることを目的とした. 現在、2018年12月までデータ収集期間を延長し,てんかん患者25,419名292,088ポイントの採血データを収集した.14,620名の成人てんかん患者(18~102歳)を対象として抗てんかん薬による低ナトリウム血症の発症リスクを明らかにした.併用抗てんかん薬数が増加するほど血清ナトリウム値は有意に低下し,抗てんかん薬と抗精神病薬の併用によって重篤な低ナトリウム血症の発症リスクが4倍上昇した.さらに,カルバマゼピンとバルプロ酸を同時に併用することで発症リスクが17倍し,抗てんかん薬のポリファーマシーは重篤な低ナトリウム血症の発症に関連することを明らかにした.さらに,小児てんかん患者(18歳未満)10,124名を対象としたところ,同様の結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コホートデータの集積は当初の計画どおり2019年4月に集積を終了した.本コホートにおいて重篤な低ナトリウム血症453例,汎血球減少症171例,重篤な肝障害316例を認めた.成人てんかん患者14,620名を対象とし,抗てんかん薬のポリファーマシーが重篤な低ナトリウム血症の発症リスクになることを明らかにした.研究成果はAmerican Epilepsy Society (AES) 2018 Annual Meetingで発表し,英文誌に投稿中である.小児を対象としても成人と同様の成果が得られたため,今年度中に成果発表する.
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Strategy for Future Research Activity |
集積されたコホートデータを用いて抗てんかん薬に起因する薬疹,肝障害,汎血球減少の危険因子を同定する.有害事象発症例100例(目標)を対象に余剰血液による遺伝子解析の同意取得を行い(コントロール群は取得済み),薬物代謝酵素の遺伝子多型の影響を検討する.
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Causes of Carryover |
研究補助者を予定通りに雇用できなかったため余剰金が生じた.
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