2018 Fiscal Year Research-status Report
プルキンエ細胞シナプス後部におけるカルシニューリン依存的入力認識機構の解明
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17K08485
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 太輔 北海道大学, 医学研究院, 助教 (90374230)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プルキンエ細胞 / カルシニューリン / GABA受容体 / シナプス特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】小脳のプルキンエ細胞は興奮性および抑制性入力に対し、それぞれ棘突起型非対称性シナプスおよび樹状突起型対称性シナプスを形成するが、この入力依存的なシナプス結合様式がどのような分子機構によって実現されるかは不明な点が多い。本研究では、興奮性シナプスの長期抑圧に関わるカルシウム依存的脱リン酸化酵素として知られているカルシニューリンに着目し、「プルキンエ細胞シナプス後部にはカルシニューリン依存的な入力認識機構が存在し、入力選択的なシナプス後部形成に関わっている」という仮説を立て、この実験的証明のためにカルシニューリンB1サブユニット(CNB1)分子欠損マウスを用いた形態学的・電気生理学的解析を行った。これまでの研究から、CNB1が小脳のプルキンエ細胞のおよび抑制性介在ニューロンに発現しており、CNB1の分子欠損が抑制性終末-プルキンエ細胞棘突起間の異所性シナプス形成を有意に増加させることを明らかにしてきた。 【平成30年度の研究成果】 これまで解析に用いてきたCNB1lox/lox::GluD2cre/+マウスではプルキンエ細胞だけでなく抑制性介在ニューロンでもCNB1分子欠損がみられた。そこでシナプス後部におけるCNB1の機能を検討するために、In Utero Electroporation法を用いてプルキンエ細胞特異的CNB1ノックダウンを行ったところ、遺伝子導入細胞では有意なCNB1の発現消失が認められ、抑制性終末密度の有意な増加が認められた。以上の所見はシナプス後部のCNB1が抑制性神経支配を制御していることを強く示唆しており、当該研究の作業仮説を支持するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題ではシナプス形成過程における入力認識機構の解明を目的として、CNB1分子欠損モデルマウスを用いて、その興奮性および抑制性回路形成、シナプス後部の分子発現を形態学的・生理学的解析により明らかにしていく。その解析項目は以下の5項目に大別される。①CNB1特異抗体を用いたCNB1発現局在解析②CNB1欠損プルキンエ細胞における興奮性、抑制性シナプス結合様式の発達変化③興奮性、抑制性シナプス後部分子発現の定量的解析④抑制性、興奮性入力応答の電気生理解析⑤協調運動機能の検討。平成30年度ではこれらの解析項目がほぼ予定通り終了し、その成果は国際学会でも報告されており、本研究計画は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では小脳におけるプルキンエ細胞スパインの入力認識機構の解明を目的として、CNB1欠損モデルマウスにおける興奮性および抑制性回路形成、シナプス後部の分子発現を形態学的・生理学的解析により明らかにしていく。平成30年度はプルキンエ細胞特異的CNB1ノックダウンマウスを対象として山崎美和子先生(本研究課題研究協力者、北海道大学・准教授)の協力を受け、上記解析項目④抑制性、興奮性入力応答の電気生理解析を行い、並行して②CNB1欠損プルキンエ細胞における興奮性、抑制性シナプス結合様式の発達変化③興奮性、抑制性シナプス後部分子発現の定量的解析を行う予定である。
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