2018 Fiscal Year Research-status Report
Dystoninコンディショナルマウスを用いたジストニア症状の責任脳回路解明
Project/Area Number |
17K08488
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
堀江 正男 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (70322716)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Dystonin / マウス / ジストニア / 神経系 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dystonin(Dst)はジストニア様の体幹および四肢の捻転、拮抗筋の高頻度同時収縮を主徴とした運動異常を示すマウス(dtマウス)の原因遺伝子である。Dstは皮膚、筋肉や神経系など生体で広く発現している遺伝子であるが、運動異常の原因となり得るDst発現細胞に関しては理解が進んでいない。今年度、本研究では、シュワン細胞におけるDstの異常が運動異常を誘発する可能性について調べるため、Dst遺伝子のトラップマウスとP0-Cre遺伝子改変マウスとを交配させて得たDstコンディショナルノックアウトマウス(P0-Cre; Dst cKOマウス)を作製し、解析を進め、以下の結果を得た。1)P0-Cre; Dst cKOマウスは幼若期に運動異常は認められなかったが、生後三か月過ぎから小脳失調を示し始めた。2)一連の運動能力解析からP0-Cre; Dst cKOマウス運動能力異常が明らかになった。3)P0-Cre; Dst cKOマウスの末梢神経の電子顕微鏡像解析から、末梢神経のミエリンが有意に薄くなっていること、マクロファージ様の細胞が末梢神経近傍に多数観察されることがわかった。以上の結果から、Dstを発現するシュワン細胞はdtマウスにおけるジストニア様の運動異常の主たる原因細胞では無いと考えられた。一方で、シュワン細胞におけるDstは末梢神経系におけるミエリン構造の維持に重要であるが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
dtマウスが示すジストニア様運動異常の原因となり得る神経要素を同定するため、今年度は末梢神経系の構成要素であるシュワン細胞におけるDstのコンディショナル実験を行い、研究実績の概要に示した結果を得たので、現在研究結果をまとめ、論文作成中である。一方、中枢神経系を構成する神経細胞要素の運動異常への関与については、現在解析中であり、予定よりやや遅れている。解析に必要なマウス数を得るのに時間がかかったことがその理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
シュワン細胞のコンディショナルノックアウト実験結果は、これらの細胞におけるDst異常がジストニア様運動異常の原因となる可能性が小さいことを示している。しかしながら、末梢神経系を構成するもう一つの重要な細胞種である後根神経節細胞に関しては、今回のコンディショナルノックアウト実験から知見を得ることができなかった。また、中枢神経系特異的にDstをKOさせたマウスもジストニア様運動異常を示さない(未発表)。今後、ジストニア様運動異常への後根神経節細胞、そして末梢神経系と中枢神経系神経要素の同時関与についても検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度は研究実績概要で示したDstを発現するシュワン細胞のコンディショナル実験と並行して中枢神経系ニューロンにおけるDstのコンディショナル実験を進める予定であった。しかしながら、中枢神経系ニューロンのコンディショナル実験に使用するマウスを必要な頭数得るのに時間を要したため、これらのマウスの組織学実験に費やすべき予算が未使用のまま残ったことが次年度使用額が生じた理由である。現在、中枢神経系ニューロンのコンディショナル実験に使用するマウスを必要頭数得たので、次年度に当該予算を使用する。
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