2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K08489
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
篠田 友靖 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80505652)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳発生 / 神経上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物は、細胞が三次元的に積み重なることで構成されている。この際の「細胞たちの間に働いている力」が、再現性の高い積み重なり、すなわち再現性の高い組織・器官発生を保証することが近年判ってきた。脊椎動物の脳の発生過程では、前駆細胞で造られた上皮構造に、(前駆細胞から生まれた)神経細胞が積層する。本研究では、①大脳原基の細胞の物性、および②細胞間に存在する力の「方向・大きさ」を見出し、これが大脳発生、すなわち脳壁での細胞の「積み重なり」において果たす役割を明らかにする。 平成29年度は、①前駆細胞の力学的特性の把握と②脳壁内部の力学的状況マッピングを実施した。 ①前駆細胞をその形状を維持した状態でガラス皿上に維持することに成功し、その状態で細胞体に外力を加えることで、擬似的に細胞体運動を生じさせることが出来た。これは脳壁内での細胞同士の押し合いが、細胞の運動方向、ひいては細胞の積み上がり方に関わっていることを示唆している。 ②脳壁を構成する細胞にフェムト秒パルスレーザーを照射し、細胞の壊れ方からそこに働いていた力を調べるという、一種の破壊実験系を確立した。前駆細胞細胞体を対象にレーザー破壊実験を行った結果、脳室面に近い場所に存在する細胞体は強く側方から押されていることが明らかになった。一方それより深部(脳膜側)に存在する細胞体は、そのような力を受けていないことも判った。これは細胞同士の押し合いによる力が脳壁内部の特定の領域で存在することを示しており、この特異的な力が領域ごとの特徴的な細胞の動き、積み重なりに重要な役割を果たす可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のとおりに研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
実験系の確率がほぼ順調に進んだため、おおむね当初の計画に基づいて研究が遂行出来る見込みである。 フェムト秒レーザーによる細胞の破壊は本研究以前にも多用されていたが、レーザーのエネルギーを細胞が受領したあと、実際になにが起こって細胞が死に至るのか殆ど判っていなかった。本研究ではこの手法で細胞に働いていた力を測っているが、手法の妥当性を確保するために、レーザー照射後の細胞の物性変化・形状変化をより詳細に調べる必要がある。
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Causes of Carryover |
高額な設備備品(油圧マイクロマニピュレーター)の購入費用と、論文の出版費用が平成30年度に消費される見込みとなったためである。また実験動物(マウス)を業者購入を減らして自前での交配を大幅に増やしたことも次年度使用額が大きくなった理由である。 次年度使用額(29年度残額)は、前述の設備備品購入と論文出版費用、および比較的高価な実験動物(フェレット)購入費用に充当し使用する予定である。
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Research Products
(1 results)