2017 Fiscal Year Research-status Report
神経特異的キナーゼを介した神経形成と自閉症発症機構の解明
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17K08492
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 厚 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (20314726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 公子 (鈴木) 広島大学, 両生類研究センター, 研究員 (00397910)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自閉症 / 神経形成 / 誘導因子シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害は、社会性障害などを特徴とする発達障害群であり、脳の構造と機能の異常が基礎にあると考えられる。研究代表者らは、神経発生学的解析に強みを持つツメガエルの神経板に局在するキナーゼ(NSK)を単離し、NSKの過剰発現が神経誘導を引き起こすことを発見した。最近、NSKの哺乳類相同遺伝子が自閉症治療薬の創薬ターゲットになることが示され、神経系におけるNSKの機能解析が早急に必要である。本研究では、神経形成に重要な誘導因子シグナルに対するNSKの作用機序、神経形成過程におけるNSKの機能阻害、および神経形成におけるNSKとNSK結合因子・リン酸化標的因子の機能的な相互作用を解析し、自閉症に繋がる脳形成異常の発症機構を解明することを目的とする。 今年度は、神経形成に重要な誘導因子シグナルに対するNSKの作用機序を解析した。先行研究から、神経誘導にはBMPシグナルの抑制、およびFGFシグナルの活性化が必要であることが報告されている。そこで、BMPシグナルを抑制した条件下でNSKを過剰発現させたところ、外胚葉組織片におけるNSKの神経誘導活性が大幅に強まることが分かった。この時、NSKはBMPシグナル抑制による2次軸形成も協調的に高めていた。FGFシグナルを活性化させた場合においてもNSKの神経誘導活性が増強されることが確認され、さらにNSKはFGFシグナルによる尾部様構造の誘導活性を強めることも分かった。以上の結果から、NSKはBMPおよびFGFシグナルと相互作用することで、神経形成を促進していることが明らかになった。次に、自閉症モデルマウスに対して治療効果が認められたNSK阻害剤でツメガエル初期胚を処理し、神経形成に対する作用を解析した。その結果、阻害剤の濃度依存的に神経マーカーの発現が低下した。したがって、NSKが神経形成に必須であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、NSKが神経形成に重要な誘導因子シグナル(BMPシグナルおよびFGFシグナル)と相互作用することで神経誘導を促進していることが分かった。当初、外胚葉組織片を用いた過剰発現においてマーカー遺伝子発現を調べることで神経誘導活性を評価する実験のみを予定していた。しかし、幸運なことに、過剰発現後の胚を長期間培養して観察することにより、NSKがBMPシグナル抑制による2次軸形成とFGFシグナル活性化による尾部様構造の誘導活性を強めることが新たに分かり、NSKが誘導因子シグナルと協調的に働くことを、より明確に示すことが出来た。また、自閉症モデルマウスに対して治療効果が認められたNSK阻害剤を用いて、ツメガエル初期発生過程における神経形成にNSKが必要であることを明らかにした。以上の結果は、NSKが神経形成に重要な役割を果たしており、ツメガエルを用いた解析が胚発生過程における自閉症の発生機序の理解に有用であることを示している。当初の研究計画通りに研究が進展していることに加え、上記の研究結果を取りまとめて論文投稿中であることから、おおむね研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は当初の予定通りに研究計画が進んだため、計画を変更せずに研究を継続する予定である。平成30年度は、自閉症に繋がる脳形成異常の発症機構を明らかにするために、自閉症治療薬の創薬ターゲットであるNSKと結合して共に作用する因子、およびNSKによるリン酸化の標的となる因子をツメガエル初期胚から単離する。平成31年度には、単離した因子群とNSKの結合様式の生化学的解析、および協調作用の神経発生学的解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
大学業務の都合で3月に予定していた実験を翌年度へ繰り越したため。新年度4~6月に行う実験の消耗品として使用する。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Coordinated regulation of the dorsal-ventral and anterior-posterior patterning of Xenopus embryos by the BTB/POZ zinc finger protein Zbtb142018
Author(s)
Takebayashi-Suzuki, K., Konishi, H., Miyamoto, T., Nagata, T., Uchida, M. and Suzuki, A.
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Journal Title
Develop. Growth Differ.
Volume: 60
Pages: 158-173
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Neural specific kinase promotes early neural development in Xenopus embryos2018
Author(s)
Regina Putri Virgirinia, Nusrat Jahan, Maya Okada, Kimiko Takebayashi-Suzuki, Hitoshi Yoshida, Makoto Nakamura, Hajime Akao, Fatchiyah Fatchiyah, Naoto Ueno and Atsushi Suzuki
Organizer
Hiroshima University International Symposium: Amphibian development, regeneration, evolution and beyond
Int'l Joint Research
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[Presentation] Neural specific kinase promotes early neural development in Xenopus embryos2017
Author(s)
Jahan, N., Virgirinia, R.P., Takebayashi-Suzuki, K., Okada, M., Yoshida, H., Akao, H., Fatchiyah, F., Ueno, N. and Suzuki, A.
Organizer
第50回発生生物学会大会
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