2019 Fiscal Year Research-status Report
脳構築におけるミクログリアの変遷機序とその意義の解明
Project/Area Number |
17K08500
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
駒田 致和 近畿大学, 理工学部, 講師 (90523994)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 哲二 近畿大学, 理工学部, 教授 (30351563)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ミクログリア / 海馬歯状回 / フタル酸エステル / ビスフェノールA / 神経発達毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、発生、発達期の中枢神経系の形態形成、さらには神経機能の成熟の異常に、神経炎症が関わっている可能性について検討してきた。内分泌撹乱作用や神経伝達阻害作用のある化学物質の胎児期、新生児期曝露は、脳、特に大脳皮質の発生、発達に様々な影響を及ぼすことが危惧されている。発生、発達期の脳は化学物質曝露に対して脆弱で、高感受性であることが報告されている。その発症メカニズムを明らかにし、さらには予防法の確立を目指している。 胎児、新生児期曝露による影響が懸念されているビスフェノールA(BPA)やフタル酸エステル(DEHP)、の胎児期あるいは発達期曝露モデルマウスを作製し、その影響について組織学的解析と遺伝子発現解析を行った。その結果、海馬歯状回の形態形成、特に神経幹細胞の増殖や神経分化に異常が観察され、それと並行してサイトカインなどの炎症関連因子の発現異常やミクログリアの異常も引き起こされていた。海馬歯状回の異常は発達初期では観察されたが、成熟後にはこれらの異常は観察されなかった。海馬歯状回は記憶や学習に重要な機関であり、その異常は行動異常として現れることが予想される。そこで、記憶学習試験である受動的回避試験を成熟した個体で行ったところ、長期記憶に異常が見られることが示された。つまり、BPAやDEHPの新生児期暴露はエストロゲンシグナルをかく乱する、あるいは脳内炎症を誘発することで、海馬歯状回の形態形成に異常を引き起こす可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
化学物質曝露モデルマウスの作製および解析については、共同研究者の尽力により進行している。これまでに、ビスフェノールA、フタル酸エステルについては研究成果をまとめ科学論文として投稿順中である。しかし、研究代表者は本年度研究機関を移動し、遺伝子改変動物の導入を計画通りに行うことができなかった。また、研究環境のセットアップに時間がかかっている。そのため、予定を変更し、遺伝子改変マウスの導入を進めつつ、ミクログリアによる神経発達の影響を特に社会的相互作用に着目した行動解析を行うことで評価する実験の準備を始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度であるが、研究代表者の所属研究機関の移動により最終年度の研究計画を実施することができなかったため、研究期間の延長を申請した。前年度までに、遺伝子改変マウスの導入準備と、社会的相互作用の行動解析機器の導入、予備的検討を行うことができたため、胎児期の脳内炎症に起因するミクログリアの異常が、社会的行動に及ぼす影響を明らかにし、さらにその原因となる脳の構造異常の検出を目指す。特に、モノアミン系ニューロンの分化や大脳皮質への投射に着目し、化学物質暴露に起因する神経発達毒性の発症機序の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度、研究代表者は研究機関を移動したため、研究環境のセットアップに時間がかかり、実験活動を計画通りに行うことができなかった。そのため、研究期間延長し、当初予定していた実験内容をさらに発展させた研究を行うことを計画している。 まずはミクログリアを可視化した遺伝子改変マウスを海外より導入し、胎児期、新生児期のストレスや化学物質暴露による影響を形態学的、組織学的、遺伝子発現レベルで解析を行う。さらに、胎児期だけでなく、発達期、思春期にかけての神経投射などの神経発達におけるミクログリアの役割についても解析を行う。 これと並行して、神経機能の発達以上の最終表現型は行動異常であることから、特に社会的行動に着目した行動解析を行う、これによって、神経発生、発達毒性における脳内炎症や、ミクログリアの異常が行動レベルでどのような影響を及ぼすのかを、遺伝子発現や形態学的異常を紐づけた解析を行うことを目指す。
|
Research Products
(3 results)