2017 Fiscal Year Research-status Report
Histological analysis of novel transforming mechanisms in adipocytes
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17K08508
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中野 知之 山形大学, 医学部, 准教授 (00333948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / ジアシルグリセロールキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪細胞はエネルギー貯蔵を目的とした白色脂肪細胞と熱産生を目的とした褐色脂肪細胞に大別される。褐色脂肪細胞は成人では退化的と考えられてきた。しかし、近年成人においても存在することが報告され、さらに白色脂肪組織中に褐色脂肪様細胞が出現するいわゆることが、「褐色化」として知られるようになり、生活習慣病の治療の観点でも、褐色化のメカニズムが注目されている。研究代表者はε型ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)欠損マウスを高脂肪食で長期間給餌すると、精巣上体周囲白色脂肪組織に褐色脂肪様細胞が出現することを基礎データとして、本研究では、DGKεの褐色化メカニズムにおける役割の解析する。計画1年目である平成29年度はDGKε欠損および野生型マウスを高脂肪食で長期間(90日および120日間)給餌し、表現型解析を行った。代表者は同マウスに対して短期間(40日)高脂肪食給餌を行うと、野生型に比較して顕著な脂肪沈着を伴う体重増加や耐糖能異常が生じることを報告しているが、今年度の実験結果により、長期間の高脂肪食給餌はDGKε欠損および野生型マウスの体重増加や白色脂肪量の差が減少すること、さらにDGKε欠損マウスでは耐糖能異常が改善されることが明らかとなった。よってDGKε欠損は短期間の高脂肪食給餌では肥満を惹起するが、長期間給餌では肥満に抵抗性を示すよう表現型が変化することが明らかになった。これらの現象が白色脂肪組織で認められる“褐色化”に起因する可能性が示唆され、次年度以降の実験遂行に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の実験計画は脂質代謝酵素DGKεの遺伝子欠損マウスを高脂肪食で長期間(90日および120日)給餌し、その表現型を詳細に解析することであった。既報の通り(Nakano et al. 2018, FASEB J)、短期間(40日)の高脂肪食給餌においては、同マウスは野生型マウスと比較して急激な脂肪沈着を伴う体重増加と耐糖能異常という生活習慣病の表現型を呈する。平成29年度の研究結果から、長期間給餌条件では短期間の結果と大きく異なる表現型が認められるようになった。すなわち、野生型マウスでは精巣上体周囲白色脂肪の沈着亢進および耐糖能異常のさらなる増悪が認められるのに対し、DGKε欠損マウスにおいては脂肪沈着の減少および耐糖能の改善が認められた。免疫組織化学的解析の結果、長期間給餌のDGKε欠損マウスの精巣上体周囲白色脂肪組織中に、DGKεと同様に小胞体に局在し、アラキドン酸代謝に関与するサイクロオキシゲナーゼ(COX)-2の発現が検出された。文献的に、COX-2により産生されるプロスタグランジンが褐色化に関与することが知られていることから、前述の平成29年度に得られたデータは、DGKεがCOX-2発現を調整し、褐色化に関連することを示唆する。よって、高脂肪負荷条件下において、DGKεの欠損は褐色化を通して脂肪沈着量の減少を惹起する可能性が考えられ、このメカニズムの詳細を次年度以降に解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得たデータに基づいて、当初の計画通りに実験を行う。長期間の高脂肪食給餌を行ったDGKε欠損マウスの詳細な表現型解析を以下の点に注目して行う。①血清脂質の定量(中性脂質、遊離脂肪酸)、②インスリンレベル定量、③プロスタグランジン定量。さらに詳細な免疫組織化学的解析により、COX-2発現細胞を同定する。次に、高脂肪食給餌のほかに褐色化を惹起するとされる以下の条件で、DGKε欠損マウスでの褐色化を解析する。①薬剤:CL316243(β3アドレノレセプタ-)を10日間腹腔投与する、②寒冷暴露(4℃および15℃でマウスを2週間飼育する)。以上の動物実験の結果を培養細胞の実験系で再現するための条件検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
備品購入が通常価格より安価で購入することができ、消耗品等も研究室に既存のものを使用したために当初の予定よりも使用額を抑えることができた。次年度は消耗品等を購入する必要が生じると考えられる。
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