2020 Fiscal Year Research-status Report
Histological analysis of novel transforming mechanisms in adipocytes
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17K08508
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中野 知之 山形大学, 医学部, 准教授 (00333948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / ジアシルグリセロールキナーゼ / 褐色化 / 寒冷暴露 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、事項に述べる実験条件の変更やCOVID-19感染症の蔓延により研究計画を延長した。令和2年度は、進捗の遅れを取り戻すべく動物実験を中心とした解析を行った。その結果、イプシロン型ジアシルグリセロールキナーゼ(DGKε)遺伝子欠損(KO)マウスでは、褐色脂肪組織(BAT)における非震え熱産生機構(non-shivering thermogenesis)に異常が生じ、十分な熱を産生できず、低体温が生じることが明らかとなった。さらに、低体温を補うために、皮下白色脂肪組織において褐色化が亢進することが示唆された。これらの実験結果は、第66回日本解剖学会東北・北海道連合支部学術集会および第126回日本解剖学会総会で発表した。さらに、脂肪組織から単離した細胞を用いた解析を開始しており、動物実験で得られた結果を細胞の実験系で検証する令和3年度の実験準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染症の蔓延により、進捗状況としてはやや遅れている。しかし、令和2年度は新たな動物実験により興味深い結果を得ている。本研究計画では、野生型およびDGKε-KOマウスを6℃で2週間飼育する寒冷暴露実験を行った。当初、コントロール条件として、室温(22℃)でマウスを飼育していた。しかし当該温度は、マウスにとっては中性温度より低いことから不適当であると考え、マウスの中性温度である30℃で飼育する実験を行った。6℃飼育においては、DGKε-KOマウスの直腸温および血糖値が野生型マウスよりも低いことが明らかとなった。6℃飼育条件における各種脂肪組織の相対重量を求めると、DGKε-KOマウスの褐色脂肪組織(BAT)のそれは、野生型よりも増加することが明らかとなった。この現象は精巣上体周囲および皮下白色脂肪組織では認められなかった。30℃飼育条件では野生型とDGKε-KOマウスに差は認められなかった。BATの組織学的解析を行うと、DGKε-KOマウスではエオシン好性の亢進および脂肪滴の小型化が観察された。現在、ウェスタンブロット解析により熱産生に関連する分子の発現レベルを精査している。一方鼠径部皮下脂肪では、6℃および22℃飼育条件においても、DGKε-KOマウスでは多胞性脂肪滴を有する細胞の増加、すなわち褐色化が野生型よりも増加していることが明らかとなった。これらの結果はDGKε-KOマウスにおいて、BATでの熱産生が不十分であり、その結果生じる低体温を補うために褐色化が亢進することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、野生型およびDGKε-KOマウスから単離したBAT細胞を用いて、酸素消費アッセイやグルコース取り込み能に係る解析を行い、DGK-マウスで生じる熱産生機構の異常のメカニズムの詳細を解析する。実験結果はCOVID-19感染症の状況にもよるが、国内外の学会で発表し、最終的に国際誌に論文として発表する。本年度内に研究課題を完遂する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染症の蔓延により、想定以上に学部教育に時間を費やすこととなり、実験計画の進捗にやや遅れが生じた。これまでに施行した動物実験の結果、ε型ジアシルグリセロールキナーゼ(DGKε)遺伝子欠損マウスは、褐色脂肪組織における熱産生機構に異常をきたし、低体温となることが明らかとなった。令和3年度は動物から単離した細胞の実験系で、熱産生機構の以上に関して精査する計画である。経費の用途としては、細胞培養に係る試薬(培養液や血清)など消耗品を予定している。
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