2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of cerebral ventricular system
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17K08511
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
竹田 扇 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20272429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩野 智彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (10442930)
成田 啓之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50452131) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳脊髄液 / クモ膜顆粒 / リンパ系 / 繊毛 / 上衣細胞 / ダイニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳脊髄液 (Cerebrospinal fluid, CSF) のホメオスタシスに関して産生、循環、吸収のプロセスを統一的に説明し、その異常と病態の基盤を解明することを企図している。本年度は、(1)昨年度に引き続きくも膜顆粒 (Arachnoid granulation, AG) の微細形態と、その細胞学的特徴の解析、(2) 脳室の繊毛機能に関係する軸糸構成分子CFAP70の細胞生物学的解析、を行った。 免疫蛍光染色法で確認されていた細胞が内皮細胞であることを微細形態レベルで確認するために抗Lyve1抗体を用いた免疫電子顕微鏡法を実施した。金コロイドがこれまでTEM観察で内皮細胞と考えていた構造に特異的に局在し、この細胞が内皮細胞としての性質を有することが判った。さらに別の分子マーカーとして抗Prox1抗体での染色も行い、その局在を確認した。また、この細胞がtelocyteと類似した構造を持つことから、AGを構成しうるか否かをその分子マーカーであるCD34ならびにpodoplaninの免疫抗体染色で検討を行なっている。 一方、脳脊髄液の循環には繊毛が機能が必須であることから、上衣細胞繊毛でも発現が見られるCFAP70の機能解析、構造解析と行なった。この分子を培養上衣細胞に強制発現させ、そのN末が繊毛への局在に関与することを示した。また、その培養上衣細胞でCFAP70をノックダウンすると繊毛打頻度の低下が見られ、この分子が繊毛運動に重要であること、ひいては脳脊髄液循環に関係することが伺われた。CFAP70の微小管との関係をクラミドモナスの鞭毛軸糸を用い、クライオ電子線トモグラフィ法で解析した。その結果CFAP70がダイニン外腕の基部に存在することがわかり、この分子がダイニン機能の調節に与ることが示唆され、脳脊髄液循環という観点からの新たな研究への足がかりが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.上衣細胞の繊毛形成とCSF循環 上衣細胞繊毛機能において重要な役割を担うと考えられるCFAP70の細胞生物学的解析が進み、同時にクラミドモナス鞭毛を用いて軸糸構造解析や運動解析につなげるところまでの成果を得た。当初の計画では上衣細胞形成機構を時系列で解析する予定であったが、進捗状況を鑑み別のストラテジーで形成過程に関係しうる分子に着目して解析を同時進行させていた。そしてこの中から繊毛機能の解析につながりうる結果を得たため、生物学的な重要性を鑑みて、こちらを優先して解析を進めた。この結果は国際英文誌に原著論文として掲載され、また上衣細胞の繊毛形成に関して当初の目的に貢献する示唆を与えたので当初とは若干方向性は異なるが、脳脊髄液循環機構の解明に資したと考え、上記の進捗評価とした。 2.AGの形成とその機能 AGに関しては主に微細形態学的な解析に留まったが、これまでに知られていなかったAGでのリンパ管様構造の存在が免疫電験法によって確認できたことは脳脊髄液循環機構の解明に大きな意義があると考える。また、経産ブタを用いた解析も進めており、これまでの生後半年程度の若い個体で行なった解析と併せて発生過程に伴うAGの変化を明らかにしつつある。また最終年度用に手術検体を利用したヒトのクモ膜顆粒で観察を行なうための準備が概ね終わり、ヒトでの知見が得られることから最終年度での論文発表の布石が形成された。従って、概ね進捗したという評価と行なった。予定通りに進まなかった部分はマウスでのAGや上矢状静脈洞の発達が著しく悪く、解析が困難であったためである。従って上記の様に検体をブタに替えて解析を進めているところであり、成果が出つつあるといえる。但しマウスの結果はAGの存在や機能が大型哺乳類に特有のものである可能性を示しており、この意味では脳脊髄液還流機構に比較発生学的な軸を示したものとして興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
本予算の最終年度を迎え、本年度はまずAGの形態学的記述に関する論文を完成させこれを英文国際誌に出版する。現時点では若年ブタ、経産ブタでのAGの構造を成長発達の観点から原稿を準備しており、この中にはAGでのリンパ系構造の存在を確認しつつある。複数の分子マーカーでの確認と経産ブタでの変化を主に検討する予定である。また、ヒトの検体を用いてその構造を比較解析し、今後の機能解析の礎にする予定である。 一方計画から遅れていた上衣細胞の繊毛の経時的変化を形態学的に追跡し、同時にCFAP70の発現パタンを追跡することを試みる。CFAP70が欠損しても軸糸は壊れないが、繊毛打頻度は明らかに低下することから繊毛の成熟と共にCFAP70の発現が進み、それによって繊毛が成熟することが予想される。繊毛打は周産期に獲得され、生後一定期間を経て弱くなることを2013年に研究代表者が報告しているがその分子機構が明らかになる可能性がある。また、フランスの研究グループによりCFAP70のヒトのホモログでの変異が発見されており、主に造精機能の観点から解析が進行している。既にこのグループとコンタクトを取っており、CFAP70のヒトでの解析も視野にいれて研究を進める予定である。さらに申請書に記載した4833427G06Rikの解析が主に精子形成の観点から別途に進行中なので、この分子の解析から得られる結果も併せて、脳室上衣細胞の繊毛機能を解明できればと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた試薬、抗体等が為替変動のため見積額よりも安価であったため、無理に使用するよりは次年度の消耗品した方が有用と考え、繰り越しを決めた。
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Research Products
(7 results)