2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of the integrated physiological mechanism of membrane excitability regulation through analyses of disease-causing gene mutations
Project/Area Number |
17K08534
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
秋田 天平 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00522202)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 発達性てんかん性脳症 / 液胞型プロトンポンプ / CRISPR-Cas9 / シナプス小胞 / 胎生期 / 大脳皮質 / 電位依存性イオンチャネル / タウリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な実績として、発達性てんかん性脳症患者で新たに見出された、液胞型プロトンポンプV-ATPase変異体の機能解析を行い、出版に至った(2021年4月8日)ことが挙げられる。V-ATPaseは様々な細胞内小器官の膜に発現し、小器官内の酸性化を担う。変異は脳に豊富に発現するサブユニットATP6V0A1で見つかり、ポンプ機能を低下させることが判明した。本研究では今年度ノーベル化学賞受賞対象となったCRISPR-Cas9ゲノム編集技術を用いて、患者と同じ変異を導入した遺伝子改変マウスを作成し解析を行ったことに新規性があり、本研究者はそれを用いて変異の脳内神経シナプス伝達への影響を解析したところ、シナプス小胞内の伝達物質量が、興奮性のグルタミン酸及び抑制性のGABAともに減少し、またシナプス総数も低下していることを明らかにした。これらは、変異によりシナプス小胞内の酸性化が弱まり伝達物質の充填が悪くなったことと、細胞内の老廃物を処理する小器官の機能不全で神経変性が促されたことによることが、他のデータからも示唆された。今後このマウスを用いた研究により、効果的な治療法の開発が進むことが期待される。 また、遺伝子変異の神経発達段階への影響、及びその後の細胞膜興奮性制御機構への影響を理解するための基礎研究の実績として、①大脳皮質抑制性介在神経の胎生期前駆細胞における、細胞膜興奮性を制御する2種類の新規膜電流成分について、1つは電位依存性カリウムチャネルの1種、もう1つは電位依存性を持つ新規の非選択的陽イオンチャネルに絞り込まれたこと、②胎生期大脳皮質に豊富に存在し、GABA受容体に作用するタウリンを、タウリントランスポーター遺伝子Slc6a6欠失により胎生期から枯渇させると、生後の大脳皮質錐体神経の発火応答が鈍麻することを新たに見出し、それぞれ学会発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記V-ATPase変異体の機能解析を優先させる必要があったことから、これまでの継続検討課題である、KCNB1変異による発達性てんかん性脳症発症機序解明のための解析が遅れている。しかし、優先課題については幸い高インパクト誌(Nature Communications)に出版の運びとなり、また神経発達段階の基礎研究についても学会発表にこぎつけられていることから、全体としておおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者と同じKCNB1変異を導入したマウスの大脳皮質錐体神経で確認された、興奮性刺激入力中の活動電位発火頻度の低下と発火間欠期の細胞膜電位の上昇について、特に発火時の細胞内への塩素イオン及びカルシウムイオン流入への影響を明らかにすることが、発症機序解明の足掛かりとなることが予想されている。今年度は競合する他の研究グループから、別の患者由来のKCNB1変異を導入したマウスを用いた機能解析の報告が出版されたが(Hawkins et al., Neurobiol Dis 147:105141, 2021)、変異の発火活動への影響は調べられておらず、発症機序に迫ったものではないため、我々は上記視点から、その細胞・組織・個体レベルでの検討を急ぎ、さらに今後上記イオン流入路を治療標的とした創薬の開発も念頭に、研究を推進する。 また、変異の神経発達段階への影響を理解するための基礎研究として、胎生脳抑制性介在神経前駆細胞での膜電流成分を担う新規非選択的陽イオンチャネル分子種の同定、それを含む各イオンチャネルの神経発達における役割の解明、そしてそれぞれのチャネル活性を変化させうる因子の同定等についても、引き続き更に検討を進める。
|
Causes of Carryover |
今年度はコロナウイルス感染拡大の影響で、下記学会発表のうち3学会はWeb開催となり、旅費が節約できたため、その分を進展の遅れているKCNB1変異の解析に充てることで、研究費を有効活用する。
|
-
[Journal Article] ATP6V0A1 encoding the a1-subunit of the V0 domain of vacuolar H+-ATPases is essential for brain development in humans and mice2021
Author(s)
Aoto K, Kato M, Akita T, Nakashima M, Mutoh H, Akasaka N, Tohyama J, Nomura Y, Hoshino K, Ago Y, Tanaka R, Epstein O, Ben-Haim R, Heyman E, Miyazaki T, Belal H, Takabayashi S, Ohba C, Takata A, Mizuguchi T, Miyatake S, Miyake N, Fukuda A, Matsumoto N, Saitsu H
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 2107
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-