2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms of myocardial ischemia/reperfusion injury mediated through transient receptor potential canonical (TRPC) channels, and establishment of new therapeutics for its treatment.
Project/Area Number |
17K08536
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 亜希子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50447877)
星野 真介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70747576)
林 維光 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80242973)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心筋虚血再灌流傷害 / 肥大心 / 不全心 / TAC手術 / TRPCチャネル / 2-APB / La3+ / Ca2+過負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血心筋の再灌流時に発生する虚血再灌流傷害は、細胞内Ca2+過負荷を主な原因とする心筋傷害であるが、その発生メカニズムは十分には解明されていない。さらに肥大心や不全心ではこの虚血再灌流傷害が増悪することが知られており、その発生メカニズムの解明は臨床的観点からも急務である。 本研究課題では,細胞膜Ca2+透過型陽イオンチャネルであるTRPC(transient receptor potential canonical)チャネルに着目して、その虚血再灌流傷害における関与を広く正常心臓から病態心臓(肥大心,不全心)を用いて検討を行うことを目的としている。 まず、平成29年度の実験において、正常心臓における虚血再灌流傷害にTRPCチャネルが関与していることを実験的に確認した。正常マウスから摘出した心臓をランゲンドルフ灌流下に虚血(30分間の灌流停止)および再灌流(60分間)を施行した。左心房から左心室にバルーンカテーテルを挿入して左心室機能(収縮期圧・拡張期圧)の計測を行い、さらに心電図記録により不整脈の発生も解析して、再灌流時の心機能の回復の程度から虚血再灌流傷害を評価した。再灌流開始後5分間に、TRPCチャネルブロック作用をもつ2-aminoethoxydiphenyl borate(2-APB; 5 μM)およびLa3+(10 μM)を投与すると、再灌流後60分の時点で計測した左心室発生圧の改善が確認できた(コントロール、50.9%;2-APB、82.8%;La3+、86.1%)。これらの結果は、再灌流時早期にTRPCチャネルが活性化されて心筋虚血再灌流傷害の発生に関与していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.正常マウスから得られた心室筋細胞において、TRPC1、TRPC3、TRPC4、TRPC6チャネルの発現を、免疫細胞化学法およびウェスタンブロッティング法により確認した。さらに、パッチクランプ法により、タプシガルギン(thapsigargin)で活性化されて2-aminoethoxydiphenyl borate(2-APB)でブロックされる電流の存在を確認した。これらの結果から、マウス心室筋細胞におけるTRPCチャネルの機能的発現を確認した。 2.正常マウスから摘出した心臓をランゲンドルフ灌流下に虚血(30分間の灌流停止)および再灌流(60分間)を施行し、虚血再灌流傷害にTRPC(transient receptor potential canonical)チャネルが関与していることを実験的に確認した。 3.TAC(transverse aortic constriction)手術により心肥大・心不全モデルマウスの作成を行った。成体C57BL/6Jマウス(7~8週令、オス)を実体顕微鏡下に第2肋間より左開胸して、腕頭動脈と左総頸動脈の間の大動脈弓部に7-0絹糸でbandingを行い、大動脈狭窄を作成して左心室に圧負荷をかけるTAC手術を行った。さらに同様の操作を行うが、bandingを行わないSham手術も施行した。手術後約2~4週間に、TACマウスとShamマウスの心臓/体重比を計測すると、TACマウスにおいて、有意に増加していることが確認できた。さらに、酵素処理によって単離した左心室筋細胞にパッチクランプ法を適用して細胞膜容量を計測すると、TACマウスではShamマウスと比較して有意に大きいことが確認できた。これらの結果は、TACマウスにおいて左心室筋細胞の増大に起因した心肥大が発生していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
Sham手術を施行したマウスから得られたコントロール心臓およびTAC手術によって作成した肥大心臓、不全心臓を用いて以下の実験を行い、肥大心、不全心におけるTRPCチャネルの機能的発現の変化および虚血再灌流傷害の発生の程度の変化について解析する。 1. コントロール心臓および肥大心臓、不全心臓に酵素(コラゲナーゼ)処理を行い,左心室筋細胞を単離して、Real-time PCR法、ウェスタンブロッティング法、免疫細胞化学法、パッチクランプ法を適用して、TRPCチャネルの機能的発現の変化を解析する。 2.ShamマウスおよびTACマウスから摘出した心臓をランゲンドルフ灌流下に虚血(30分間の灌流停止)および再灌流(60分間)を施行する。左心房から左心室にバルーンカテーテルを挿入して左心室機能(収縮期・拡張期圧)の計測を行い,さらに心電図記録により不整脈の発生も解析して,再灌流時の心機能の回復の程度から、肥大心および不全心における虚血再灌流傷害の程度を正常心と比較する。さらに、2-APB(5 μM)およびLa3+(10 μM)の作用から、肥大心、不全心におけるTRPCチャネルの虚血再灌流傷害における関与を検討する。
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