2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08538
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
豊田 博紀 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00432451)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 島皮質 / イオンチャネル / 神経回路 / 興奮伝播 / ネットワーク / 味覚 / 受容体 / 自律神経応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質第一次味覚野を含む島皮質は、味の受容・認知において非常に重要な脳部位である。しかし、島皮質神経回路の機能的特性は未解明な点が多く残されており、どのような情報処理機構により、味の受容・認知が行われているかは不明である。本研究は、味覚情報処理に関与する因子として、島皮質に発現している味覚関連受容体の機能的役割を検討し、味覚情報処理に果たす役割について明らかにすることを目的とする。これまで我々は、不全顆粒島皮質から無顆粒島皮質移行部の第4層に電気刺激を与えると、第4層に引き起こされた興奮は、第2/3層および第5/6層の両方向に伝播し、カラム状の興奮を示すことを明らかにしている。本年度は、島皮質味覚野に発現しているTRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)受容体の活性化により、島皮質味覚野に生じる興奮伝播様式がどのように変化するかを観察した。不全顆粒島皮質と無顆粒島皮質移行部の第4層に金属電極を設置し、カプサイシン非存在下で電気刺激を与えると、第4層で生じた興奮は第2/3層および第5/6層の両方向に伝播し、カラム状の興奮を示した後、消失した。一方、カプサイシン存在下で電気刺激を与えると、カラム状の興奮は消失せず、時間の経過とともに吻尾方向に拡がり、味覚野全体に興奮が広がっていた。そして、生じた興奮は味覚野後部に隣接する自律機能関連領野へと拡がり、両領野の神経細胞集団の間にシータリズム(4~8 Hz)で同期化した神経ネットワーク活動が形成されることを見出した。これらの結果から、TRPV1受容体の活性化により、味覚情報処理が速やかに行われ、さらには、自律神経応答が引き起こされる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、島皮質に発現している味覚関連受容体として、TRPV1受容体の機能的役割について検討した。島皮質に発現しているTRPV1受容体の活性化により、興奮伝播範囲が拡がり、ネットワーク活動が生じることから、島皮質における味覚情報処理においてTRPV1受容体が重要な役割を果たしているものと考えられる。このように、味覚情報処理に果たす役割の一端を確認することができたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒトの空腹時において、胃・腸管および脳におけるアナンダミドの血中濃度は高く、逆に、オレオイルエタノールアミドの血中濃度が低いことが知られている。その一方、満腹時では、逆の挙動を示すことが知られている。島皮質においてはCB1受容体が豊富に発現していることから、空腹時、脳で増加するアナンダミドにより活性化され、摂食行動の亢進に関与する可能性が示唆される。しかしながら、島皮質に発現するCB1受容体の機能的役割は不明な点が多い。このため、次年度は、島皮質に発現している味覚関連受容体として、CB1受容体に着目して、機能的役割について検討し、味覚情報処理に果たす役割を明らかにする。
|