2018 Fiscal Year Research-status Report
心筋選別とiPSテクノロジーによる先天性QT延長症候群タイプ6の病態・病因解明
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17K08539
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
白吉 安昭 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90249946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 佩俐 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40464292)
池田 信人 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50620316)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒトiPS 細胞 / 心筋 / QT延長症候群 / 可視化 / ゲノム編集 / 蛍光タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性QT延長症候群タイプ6(LQTS6)は、QT延長に加えて、徐脈を呈するという特徴を持つ。米国コロンビア大学の矢澤研究室で樹立されたLQTS6患者由来iPS細胞を用いた心筋分化誘導系に、我々が開発した蛍光タンパク質レポーターを用いたサブタイプ心筋の選別分取法を適用する。これにより、LQTS6-iPS細胞由来の洞結節ペースメーカ細胞および心室筋細胞を個別に純化し、疾患の病態・病因がどの細胞にあるのか、その発症メカニズムなどを解析することが本研究の目的である。 前年度までに、心室筋細胞をmCherry蛍光タンパク質で可視化できるLQTS6-iPS細胞株(#M株)の樹立に成功していた。本年度は、#M株を用いて、(1)ペースメーカ細胞をEGFPによって可視化できる細胞株の樹立、(2)#M株の樹立時に用いたPGK-neo-pAカセットの除去を行った。 具体的には、(1)CRISPR/Cas9ゲノム編集法によって、内在性HCN4遺伝子座へEGFPをノックインし、HCN4陽性細胞(洞結節ペースメーカ細胞)の可視化を試みた。その結果、HCN4遺伝子座へのノックインが確認できた細胞株を複数樹立することに成功した。しかし、EGFPの発現は弱く、ペースメーカ細胞を効率よく可視化するには至らなかった。(2)Cre-loxP組み替えによって、MLC2v-mCherryノックイン遺伝子座からPGK-neo-pAを除去した細胞株(#M2株、#M9株)の樹立に成功した。(3)#M株、#M2株、#M9株について心筋への分化誘導を行い、mCherryの発現を経時的に観察した。その結果、#M株と比較して、#M2株、#M9では、mCherryの発現が、2週間程度遅れるて始まることが分かった。ノックイン株では、PGK-neo-pAカセットが、MLC2vの発現に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトiPS 細胞を用いて、心室筋細胞をmCherry赤色蛍光タンパク質で、洞結節ペースメーカ細胞をEGFP緑色蛍光タンパク質で可視化し、それらをセルソーターによって分取した後、それぞれの特性を解析することが本研究の骨子である。当初の予定通り、心室筋細胞をmCherryによって可視化できる細胞株の樹立に成功すると共に、EGFPのHCN4遺伝子座へのノックインにも成功した。しかし、樹立した洞結節ペースメーカ細胞において、想定通りにはEGFPの蛍光を観察できず、洞結節ペースメーカ細胞の可視化には成功していない。このため、当初の予定よりも進捗が遅れている。 これは、HCN4遺伝子座へのEGFPの導入部位あるいは方法(HCN4タンパク質C末端への2A配列を介した導入)に問題があったのではないかと考えている。洞結節ペースメーカ細胞の可視化は、心室細胞の可視化と同様に、CRISPR/Cas9によるゲノム編集法を用いて、内在HCN4遺伝子座へのEGFP遺伝子のノックイン法によって行っている。ゲノム編集のためのガイドRNAは、HCN4タンパク質のC末端に設定し、2A配列を介して挿入する形でデザインした。内在HCN4タンパク質とほぼ同量のEGFP発現を期待してデザインしたが、内在HCN4遺伝子の発現量が想定よりも少ない、あるいはEGFPのプロセッシングがうまくいかず癒合タンパク質が生成して、EGFPの蛍光が弱くなった等の可能性が考えられる。 一方、PKG-neo-pAカセットが、ノックインしたMLC2vの発現に影響を与えている結果が得られている。mCherry蛍光の発現時期の早期化あるいは発現強度の上昇が起こっていると考えられ、想定外ではあるが、MLC2v遺伝子の心室筋細胞での発現制御に関して、新たな知見が得られる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ペースメーカ細胞でHCN4遺伝子の発現を可視化できるLQTS6-iPS細胞株を樹立する。これまでのところ、内在のHCN4遺伝子座へのノックインがうまくいっていない。そこで現在、(1)内在HCN4遺伝子座へのEGFPノックイン方法の変更、(2)新たにHCN4-BAC(Bacterial Artificial Chromosome)を用いたセミノックイン法によるEGFP導入の2通りの方法で進めている。本年度が最終年度であるため、できる限り早急に細胞株の樹立を目指す。 具体的には、EGFPを内在タンパク質のC末端部位に2A配列を介して挿入してきたが、開始コドンを含む第1エクソンの一部をEGFPに置き換えることによってHCN4の発現をEGFPによって可視化できるようにデザインを変更する。また、C末端部位へ可視化についても、CRISPR/Cas9によるゲノム編集で用いるガイドRNAを別部位に新たに設定し、もう一度試みる予定である。HCN4-BACを用いたセミノックイン法では、ゲノムへの挿入位置に応じて異所的な発現が起こる可能性があるが、我々の研究室では、ヒトES細胞を用いた成功例もあるので並行して行う予定である。 また、樹立に時間がかかる可能性もあるので、既に樹立に成功しているMLC2v-mCherryノックインLQTS6-iPS細胞株を用いて、MLC2v陽性心室筋細胞を選択的に分取し、電気生理学的解析を進め、LQTS6の病態(QT延長)が、心室細胞で再現できているかどうか検討する。 最後に、PGK-neo-pAカセットによるMLC2v発現が変化することを新たに見いだしている。当初の計画には含まれていないが、PGK-neo-pAカセットが、どのようにMLC2vの発現に影響を与えているのかを、ルシフェラーゼを用いた一過性の発現制御実験を行い、シスエレメントの同定等によって明らかにする。
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Causes of Carryover |
ヒトiPS 細胞を用いて、心室筋細胞をmCherry赤色蛍光タンパク質で、洞結節ペースメーカ細胞をEGFP緑色蛍光タンパク質で可視化し、それらをセルソーターによって分取した後、それぞれの特性を解析することが本研究の骨子である。当初の予定通り、心室筋細胞をmCherryによって可視化できる細胞株の樹立に成功したが、EGFPによるHCN4を可視化できる細胞株の樹立には成功していない。このため当初の予定よりも進捗が遅れ、計画していたLQTS6-iPS細胞に由来する心室筋細胞や洞結節ペースメーカ細胞の解析が、行えなかった。そのため、研究費に余剰が生じ、次年度予算が増加した。 現在、ペースメーカ細胞を可視化できるLQTS6-iPS細胞細胞株の樹立に関して、新しい方策を導入し、複数のアプローチでHCN4の発現をEGFPで可視化できるLQTS6-iPS細胞株の樹立を試みている。また、これまでに樹立したMLC2v-mCherry-LQTS6-iPS細胞株を用いて、心室筋細胞の分取精製および特性解析を行う。さらに、前年度のPGK-neo-pAによるMLCvの発現制御という発見に基づき、MLC2vの心室筋細胞での発現制御実験を新たなに開始する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Inhibitory effects of class I antiarrhythmic agents on Na+ and Ca2+ currents of human iPS cell-derived cardiomyocytes.2019
Author(s)
Yonemizu S, Masuda K, Kurata Y, Notsu T, Higashi Y, Fukumura K, Li P, Ninomiya H, Miake J, Tsuneto M, Shirayoshi Y, Hisatome I.
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Journal Title
Regen Ther.
Volume: 10
Pages: 104-111
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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