2019 Fiscal Year Research-status Report
心筋選別とiPSテクノロジーによる先天性QT延長症候群タイプ6の病態・病因解明
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17K08539
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
白吉 安昭 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90249946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 佩俐 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40464292)
池田 信人 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50620316)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 疾患iPS細胞 / 先天性QT延長症候群 / 蛍光タンパク質 / 可視化 / 心室筋 / ペースメーカ細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性QT延長症候群タイプ6(LQTS6)は、QT延長に加えて、徐脈を呈するという特徴を持つ。米国コロンビア大学の矢澤研究室では、LQTS6患者由来iPS(LQTS6-iPS)細胞が樹立されている。そこで、LQTS6-iPS細胞を用いた心筋分化誘導系に、我々が開発した蛍光タンパク質レポーターを用いたサブタイプ心筋の選別分取法を適用する。これにより、患者由来のLQTS6-iPS細胞から洞結節ペースメーカ細胞および心室筋細胞を個別に純化し、疾患の病態・病因がどの細胞にあるのか、その発症メカニズムとペースメーカ機能との関連などを解析することが本研究の目的である。 具体的には、LQTS6-iPS細胞を用いて、ペースメーカ細胞(HCN4陽性)をCFP(青色蛍光タンパク質)で、心室筋細胞(Mlc2v陽性)をmCherry(赤色蛍光タンパク質)で個別に可視化できる細胞株を樹立することを目的とした。前年度までに、後者の心室筋細胞のmCherryによる可視化できる細胞株の樹立に成功していたので、本年度は、まずHCN4の発現をEGFPで可視化できる細胞株の樹立を試みた。その結果、HCN4の発現をEGFPできるLQTS6-iPS細胞の樹立に成功した。しかし、細胞株の樹立に予想外に時間を要した。このため、EGFP陽性細胞(ペースメーカ細胞)とmCherry陽性細胞(心室筋細胞)の可視化には成功したが、その選択的分取および解析に遅れが生じた。現在、細胞の分取と解析を遂行中である。 なお、計画通り研究が進捗しなかったので、新規な細胞株の開発などを並行して行い、(1)心臓を構成するもう一つの代表的な心筋である心房筋をヒトiPS 細胞より可視化-選別採取できるシステムの開発、(2)各種心筋細胞を直接可視化-選別採取できるトランスジェニック動物(ラット、マウス)の開発に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、まず先天性QT延長症候群の疾患iPS細胞株を用いて、心臓ペースメーカ細胞と心室筋細胞の可視化と選択的分取、続いて、分取した心臓ペースメーカ・心室筋細胞を用いた病因・病態解析を目的としている。しかし、(1)可視化のための改変iPS細胞株の樹立に時間を要したこと、(2)一時的に、ヒト多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)からの心筋分化誘導の再現性と効率が低下したこと、これらにより、細胞株の樹立そのものおよび樹立した細胞株の選択(心室筋やペースメーカ細胞を可視化できる細胞株の)に、予想外の時間がかかってしまった。現在、ヒトiPS細胞の遺伝子改変のためのゲノム編集法と分化誘導条件の再検討により、細胞株の樹立に成功しつつある。本研究の目的であるLQT6患者に由来する疾患iPS細胞の病因・病態解析が可能となったので、研究期間を延長し、樹立した細胞株を用いた解析を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
LQTS6-iPS細胞を用いて、ペースメーカ細胞(HCN4陽性)をCFP(青色蛍光タンパク質)で、心室筋細胞(Mlc2v陽性)をmCherry(赤色蛍光タンパク質)で個別に可視化できる細胞株を樹立にようやく成功したので、まず、(1)樹立した細胞株を心筋へ分化誘導後、CFPとmCherryの蛍光を指標にペースメーカ細胞、心室筋細胞を分取する。続いて、(2)分取したLQTS6-iPS細胞由来のペースメーカ細胞あるいは心室筋を用いて、QT延長、徐脈などの病態が再現性されるかどうかを検証する。さらに、(3)各種イオンチャネル電流(Na-、Ca-、K-チャネル電流)の異常を調べ、疾患の原因遺伝子MiRP1のM54T変異が、どの細胞で、どのチャネル機能を阻害しているのか、LQTS6の病因を明らかにする。具体的には、パッチクランプ法によって電気生理学的特性を明らかにすることによって、徐脈、QT延長、それぞれの病態が、どちらの心筋で再現されるかを調べ、標的細胞を特定する。また、(4)新規に心房筋の選択的分取システムの構築にも成功しているので、心房筋についてもその特性を調べ、影響を受けているかどうか明らかにしたいと考えている。このように、それぞれのサブタイプ心筋細胞を用いて、原因遺伝子MiRP1のM54T変異とQT延長・徐脈との関連を、細胞レベル、分子レベルで解析することを目標とする。
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Causes of Carryover |
本研究では、まず先天性QT延長症候群タイプ6の疾患iPS細胞株(LQTS6-iPS細胞)を用いて、患者由来の心臓ペースメーカ細胞と心室筋細胞の可視化と選択的分取を目指していた。しかし、(1)可視化のための改変iPS細胞株の樹立に時間を要したこと、(2)一時的に、ヒト多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)からの心筋分化誘導の再現性と効率が低下したこと、これらにより、細胞株の樹立および樹立した細胞株の選択(心室筋やペースメーカ細胞を可視化できる細胞株の)に、予想外に時間がかかってしまった。このため研究機関を1年間延長している。 これまでに樹立に成功している(1)HCN4の発現をEGFPで、(2)MLC2vの発現をmCherryで、(3)心房筋の発現をEYFP(黄色蛍光タンパク質)の発現によってモニターできるLQTS6-iPS細胞を心筋分化誘導し、洞結節ペースメーカ細胞、心室筋細胞、心房筋細胞をそれぞれ可視化-選択的分取する。分取したペースメーカ細胞と心室筋細胞、心房筋細胞の電気生理学的特性を解析することによって、徐脈、QT延長、それぞれの病態が、どの心筋で再現されるかを調べ、標的細胞を特定する。そして、LQTS6の疾患原因遺伝子MiRP1のM54T変異とQT延長・徐脈との関連を、細胞レベル、分子レベルで解析することを延長期間内の目標とする。
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Research Products
(3 results)