2017 Fiscal Year Research-status Report
副腎髄質細胞のTASKチャネルの分子実体と機能:ノックアウトマウスを用いた研究
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17K08555
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
井上 真澄 産業医科大学, 医学部, 教授 (40223276)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 副腎髄質細胞 / TASKチャネル / アシドーシス / カテコールアミン / 分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
アシドーシスを感知するTASKチャネルの分子実体を明らかにするために、野生型、TASK1ノックアウト、そしてTASK3ノックアウトマウスの副腎髄質(AM)細胞から全細胞電流を記録して、外液pH低下にたいする膜電流応答を調べた。保持電位-50 mVにおいて、野生型AM細胞では、外液pHを7.4から6.0まで、0.3または0.4のステップで減少させると、TASKチャネルの抑制により内向き電流が可逆的に発生した。そのEC50は約pH7.1であった。TASK1遺伝子をノックアウトすると、この外液pH低下による内向き電流は完全に消失したが、TASK3遺伝子のノックアウトでは影響を受けなかった。次に、アンペロメトリー法によりカテコールアミン分泌を測定して、外液pH低下により誘発される分泌に対するTASKチャネルノックアウトの影響を調べた。野生型AM細胞では、調べた細胞の33%でpH6.8により分泌が誘発されたが、TASK1ノックアウトAM細胞では調べた細胞すべてで分泌は誘発されなかった。一方、TASK3ノックアウトAM細胞では23%の細胞で分泌が誘発された。TASK1とTASK3の両方が発現しておりば、TASK1のノックアウトにより、TASK3は二量体のチャネルを形成することが予想される。そこで、この可能性をruthenium redにより内向き電流が発生するかを調べることにより、検討した。10 uM ruthenium redの投与は、野生型及びTASK1ノックアウトAM細胞において内向き電流を発生させなかった。この結果はAM細胞では、TASK3がほとんど発現していないことを示唆する。実際、免疫染色においてTASK1様免疫反応は、強く細胞辺縁に観察されたが、TASK3様免疫反応はほとんど確認されなかった。これらの結果より、AM細胞におけるTASK1チャネルの発現が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した結果をもとに論文を作成し、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
TASK1チャネルがマウスAM細胞に発現し、静止膜電位の形成に寄与していることが、明らかになったが、TASK1のノックアウトによっても、静止膜電位は変化しなかった。この結果は、TASK1の欠損は、他のKチャネルにより代償されていることを意味する。そこで、TASK1のノックアウトにより、upregulationされるKチャネルを明らかにする。次に、AM細胞では、TASK1様免疫反応物は、おもに細胞膜、または細胞辺縁に局在し、細胞質には存在しなかった。この結果は、AM細胞の不死化細胞であるPC12細胞にTASK1チャネルを強制発現させても、再現された。これらの結果は、AM細胞では、TASK1チャネルを細胞膜に効率よく輸送する機序が存在することを示唆する。そこで、その機序を明らかにする。最後に、TASK1チャネルの生理的役割を行動実験により明らかにする。激しい運動をすると、副腎髄質からのアドレナリン分泌が促進される。このアドレナリン分泌には、AM細胞のTASK1チャネルがアシドーシスにより抑制されることが関与している可能性がある。この可能性をトレッドミルを用いた行動実験により検討する。
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Causes of Carryover |
試薬などの消耗品の一部は、研究室で所持していたものを使用した。このため、研究費がうき、約54万円を次年度に繰り越すことになった。次年度は、この繰り越し金を試薬などの消耗品に当てることになる。
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