2018 Fiscal Year Research-status Report
副腎髄質細胞のTASKチャネルの分子実体と機能:ノックアウトマウスを用いた研究
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17K08555
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
井上 真澄 産業医科大学, 医学部, 教授 (40223276)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 副腎髄質細胞 / TASKチャネル / アシドーシス / カテコールアミン / 分泌 / TALK2チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス副腎髄質(AM)細胞におけるTASK1チャネルの静止膜電位形成への関与を調べるために、穿孔パッチクランプ法を用いて全細胞電流を記録した。-50 mVに膜電位を保持した際の全細胞電流レベルは、TASK1遺伝子をノックアウトしても全く変化しなかった。さらに、TASK1遺伝子ノックアウトの静止膜電位への影響を、アンペロメトリー法によりカテコールアミン分泌を記録することにより検討した。静止時の分泌は、野生型およびTASK1遺伝子ノックアウトマウスのAM細胞において、ともに静止時には分泌はほとんど誘発されなかった。これらの結果は、ノックアウトによるTASK1チャネルの欠損の影響は、他のKチャネルにより代償されることを示唆する。 マウスAM細胞の静止膜電位形成には、TASK1チャネルばかりでなく、内向き整流Kチャネルも関与する。そこで、静止膜電位近傍そして-90mVから-110mVの膜電位領域のslope conductanceを測定した。前者はリークKチャンネル、後者は内向き整流Kチャネルのチャネル活性を主に反映していると考えられる。両slope conductanceとも、TASK1チャネルのノックアウトにより影響を受けなかった。これらの結果は、TASK1チャネルの欠損は、リークKチャネルの一種の2PKチャネルにより代償されていることを示唆する。 TASK1遺伝子ノックアウトのAM細胞では、外液のpHを8.2、9.0とアルカリにすると、著名な外向き電流が誘発された。このアルカリにより誘発される電流の逆転電位はKの平衡電位の-80mVであり、さらに外液に1mMBaを加えると、可逆的に抑制された。これらの結果は、TASK1チャネルの欠損は、2PKチャネルファミリーの中のTALK2チャネルにより代償されることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究結果の一部は、すでに学会誌に論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスAM細胞においてムスカリン受容体刺激による細胞興奮は、TASK1チャネルの抑制と非選択的カチオン(NSC)チャネルの活性化による。TASK1チャネルおよびNSCチャネルは、それぞれbupivacaineおよびquinineにより抑制される。TASK1のノックアウトマウスAM細胞では、ムスカリン受容体刺激により、NSCチャネル活性化による脱分極だけが起こることが予想され、ムスカリン受容体刺激によるNSCチャネル活性化の詳細な機序が明らかになることが期待される。最後に、TASK1チャネルの生理的役割を行動実験により明らかにする。野生型、TASK1ノックアウト、そしてTASK3ノックアウトのマウスをトレッドミルを使い運動持続能を測定する。TASK1ノックアウトマウスでは、運動持続能が低下していることが明らかになる可能性がある。
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Causes of Carryover |
研究室に在庫している試薬や消耗品を使って実験をしたために、若干の繰越金が発生した。今年度はすべて研究費を消耗品費、旅費、そしてその他の項目として使い切る予定である。
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