2018 Fiscal Year Research-status Report
発達期脳内GABA変動からみた自閉症モデルマウスの病態解析および早期治療法の探索
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17K08562
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山田 順子 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (30334965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小枝 周平 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (00455734)
冨山 誠彦 弘前大学, 医学研究科, 研究員 (40311542)
佐藤 ちひろ 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (70757468)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動介入 / バルプロ酸投与マウス / 記憶・学習障害 / 常同行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルプロ酸ナトリウム(VPA)が脳内のGABA を増加させることに着目し以下の実験を行った。VPA 母体投与による自閉症モデルはすでに確立したため、本年度は出生後VPA投与による病態解析および運動介入の効果、雌雄差解析を行った。 出生後VPA投与マウス病態解析:出生14日後のマウスにVPA 400mg/kgを皮下注射により投与した、コントロール群は同量の生理食塩水を投与した。 1)総活動量解析:雄では両群に差はみられなかったが、メスではVPA群の有意な活動量増加が見られた2)オープンフィールドによる行動解析:雄ではVPA群が優位に中央区画滞在時間の上昇が見られた。3)Preening/Groomingによる常同行動解析:雌雄ともVPA群で有意に増加が見られた。4)記憶テスト(八方向迷路):雌でのみVPA群で記憶時間の延長が見られた。5)社会性テスト(3チャンバー試験):両群で顕著な差はみられなかった。 次にこれらの動物に対して、トレッドミルによる強制運動介入を行った(週7回、4週間 10m/分 1時間)。この運動介入により、常同行動の減少、記憶・学習障害の改善がみられたが、一方、活動量には両群で違いはみられなかった。雌雄では、常同行動の改善は雌で顕著であり、記憶障害の改善は雄で顕著であった。以上の結果から、生後VPA投与にも記憶障害、常同行動など脳へ何らかの影響を与えていることが示唆された。また、運動介入によりこれらの障害が改善される可能性が明らかとなった。運動介入による効果が神経新生によるものなのか、シナプス可塑性によるものなのかを解析するため、神経新生解析用に運動介入開始から7日間BrdUを連続投与した。BrdUの解析は次年度行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、母体バルプロ酸投与による影響のみを解析する予定であったが、現在、出生後バルプロ酸投与による研究が少なく、データ取得は重要であると考えたため、本年度は出生後VPA投与マウスの解析および運動介入による効果の解析を中心に行った。 出生前VPA投与モデルでは主に社会性の異常がみられたが、出生後VPA投与モデルでは学習・記憶能力の低下、行動量の異常がみられた。この違いは今後VPAの脳に対する影響を考えるうえで極めて重要であると考えられる。 また、運動介入の効果は記憶学習障害、常同行動に関して改善がみられた。これは、発達障害への運動介入の有用性を示唆している。運動介入効果が神経新生に起因するものか調べるため、BrdUを介入期間中投与してあり、脳標本は保存している。次年度にこの解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
運動介入による効果が、スパインなどの形態変化によるものか、神経新生が生じた結果なのかを解析するため、すでに前年度行ったマウスにはBrdUを投与していた。これらの脳はサンプルとして保存してあるので、神経新生解析を行う。 脳スライスパッチクランプ法を用いたin vitroの解析【GAABA応答、興奮性入力の変化)を行う。
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Causes of Carryover |
出生後VPA投与モデル動物の作成および解析、運動介入効果の検討を2018年度に行ったため、当初行う予定であった母体VPA投与モデルのシナプス解析を2019年度に行うことにした。また、2018年度に行った動物の脳サンプルの形態学的解析を2019年度に行う。このため、妊娠マウス購入費、抗体、組織サンプルの解析のための物品購入を行う必要性が生じたため。
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Research Products
(14 results)