2018 Fiscal Year Research-status Report
視床下部摂食代謝中枢におけるN6-メチルアデノシンの制御と役割
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17K08566
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
河野 大輔 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (10382904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満 / 視床下部 / m6A / FTO |
Outline of Annual Research Achievements |
N6-メチルアデノシン(m6A)修飾の脱メチル化酵素であるFTOタンパクの、視床下部摂食代謝中枢における役割を調べている。昨年度までの研究により、摂食代謝中枢の特定のニューロン群に存在するFTOが、体重の調節に重要な働きをしていることをコンディショナルFto欠損マウスを用いて明らかにした。また、FTOは、そのニューロン群において、特に、特定のカテゴリーに属する遺伝子のpre-mRNAの m6A修飾を脱メチル化していることを、m6A免疫沈降とそれに続く次世代シーケンサー解析(m6A-seq)により明らかにした。 今年度は、FTOによるpre-mRNAのm6A脱メチル化が、直接的には、如何なる変化につながるかを検討した。m6A修飾は、一般的に、選択的スプライシングや、翻訳効率、RNAの安定性などのRNAが関わる様々な現象に影響することが知られている。昨年度に行った網羅的なFTO標的の解析結果によると、選択的スプライシングに関わる遺伝子群がFTOの有力な標的になっている。また、FTOは、視床下部においては、特に、エクソンやイントロン領域のm6A修飾を脱メチル化をしていた。これらのことから、視床下部においては、FTOによるm6Aの脱メチル化が選択的スプライシングに影響していることが疑われた。 そこでFTOの標的遺伝子の選択的スプライシングについて調べたところ、FTOが特に大きく脱メチル化する複数のm6A修飾領域の近傍にスプライシングバリアントが存在しており、さらに、エクソン・スキッピングやエクソン・インクルージョンがFTO欠損マウスにおいて変化していることが見いだされた。したがって、視床下部のFTOによるm6Aの脱メチル化の少なくとも一部は、選択的スプライシングに影響していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FTOによるm6A修飾の脱メチル化が引き起こす、直接作用の少なくとも一部が、選択的スプライシングへの影響であることを明らかにできたため、順調に進展していると考えている。 また、内的要因(ホルモンなど)や外的要因(食事の栄養素バランスなど)による、FTOの発現レベルやm6A修飾パターンへの影響についても検討を行っており、一部、興味深い結果が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
FTOによるm6A修飾の脱メチル化が引き起こす、直接作用の少なくとも一部が、選択的スプライシングへの影響であることを明らかになったため、今後は、選択的スプライシングの変化が、如何なる生体機能の変化を介して体重の調節につながるかを明らかにしたい。 また、既報では、全身性のFtoの欠損マウスで痩せになることに加えて、全身性のFto過剰発現マウスで肥満になることが報告されている。したがって、FTOの増加も機能に影響すると考えられる。我々の現在まで研究は、Ftoのコンディショナル欠損マウスを用いた検討のみであった。最終年度では、AAVウィルスベクターとCreマウスを用いて、Ftoを視床下部の特定のニューロンで過剰発現させることを計画している。Ftoコンディショナル欠損マウスと反対の表現型が現れるかを調べたい。
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Research Products
(3 results)