2018 Fiscal Year Research-status Report
腸管上皮におけるマイクロバイオーム代謝産物受容とその生理・病態生理機能解析
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17K08570
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
唐木 晋一郎 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00363903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保田 倫子 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (00707036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸マイクロバイオーム / 腸内化学環境感受機構 / Ussing chamber / プロバイオティクス / バイオジェニックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸管上皮が腸内細菌叢(腸マイクロバイオーム)代謝産物を如何に受容し、生理応答を惹起するか、また、この受容機構に対する働きかけを介して、過敏性腸症候群や、経腸栄養の際にしばしば問題となる下痢の発症を予防・治療するための基礎的知見を得るために行った。 乳酸菌発酵産物を配合した飼料によって2週間飼育したラット腸管を摘出し、回腸~直腸まで腸管各部位の粘膜-粘膜下組織標本を作製、Ussing chamber に装着して膜コンダクタンス(Gt)、短絡電流(Isc)、電気刺激(EFS)に対する反応性、プロピオン酸刺激に対する反応性、4kD FITCデキストラン(FD4)透過性(FD4 Papp)を測定し、通常食群と比較した。また、盲腸内容物中の有機酸濃度測定と腸内細菌の菌叢解析を行った。 その結果、乳酸菌発酵産物配合食によって飼育したラットの盲腸や中位結腸では、神経刺激によって惹起される短絡電流(Isc)上昇がSTD-F群に比べて抑制されており、回腸終末部では、管腔側からのプロピオン酸刺激によるIsc変化が抑制されていた。また、盲腸内容物中の腸内細菌叢解析においては、乳酸菌発酵産物配合食群の単位重量当たりの菌数が、特に乳酸菌の増加によって増加していた。 以上の結果から、乳酸菌発酵産物配合食群は、腸内細菌叢と総有機酸の量と質を変化させることで、管腔内刺激や神経系によって制御される腸上皮の水分泌機能を変化させたと考えられる。このことから、FDP-Fは経腸栄養時の下痢の発症を防止することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、フラボノール等の食品成分や、食品成分でもあり腸内細菌代謝産物でもあるニコチン酸による腸管粘膜刺激-分泌応答について、摘出腸管粘膜組織に対する管腔内化学物質の直接作用を in vitro で測定した結果を得た。本年度は、ラットを乳酸菌発酵産物配合食で飼育した後、腸管を摘出して腸管粘膜組織の機能変化を測定する ex vivo の結果を得た。このように、現在までに、in vitro および in vivo による、腸内環境感受機構を介していると考えられるラット腸管粘膜機能の生理応答を得ることができたことから、研究はおおむね順調に進展したと考えている。ただし、以上の結果はまだ論文としては発表していないことから、次年度中には上記結果を論文にまとめ、発表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度までに得られた in vitro および in vivo のデータを、論文としてまとめ、発表する作業を行うと共に、これまでに得られている実験結果の作用機序を分子レベルで解明するために、分子生物学的実験を行い、データを得ていきたい。具体的には、関連が示唆される受容体分子の発現・分布をqRT-PCRや免疫染色法によって確認する実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
19円とわずかな額であり、次年度に使用することに問題ないと判断したため。通常の消耗品購入にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)