2018 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミン神経系異常と心理的ストレスが引き起こす多動性障害の機構の解明
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17K08576
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
梅村 真理子 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (30521489)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モノアミン / 脳 / マウス / 行動異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
ATF5欠損マウスは多動などの異常行動を示した。特にホームケージではない新規の環境において、多動や不安様行動が上昇していることがわかった。ATF5欠損マウスの異常行動の原因を調べるために、脳内神経伝達物質であるモノアミンの量を解析したところ、扁桃体などでドーパミンなどの量が減少していることがわかった。本研究では、多動などの異常行動の原因を解明するために、ATF5欠損マウスを用いて脳内異常の原因を明らかにすることを目的とした。 本年度は、まずATF5欠損マウスの扁桃体の神経細胞について解析を行った。扁桃体に局在するニューロンを可視化し顕微鏡観察を行ったところ、扁桃体の大きさ、総細胞数については、ATF5欠損マウスは野生型マウスに比べて変化はなかった。扁桃体は、大脳皮質に連結した部位であり、大脳皮質を構成しているニューロンは扁桃体にも存在する。ATF5欠損成体マウスの大脳皮質は厚さや細胞数には異常が見られなかったが、インターニューロンが減少していることがわかった。一方、扁桃体のインターニューロンに顕著な異常は見受けられなかった。 モノアミンの一つであるセロトニン作働性ニューロンにおいては、新生仔期の縫線核で減少していることが明らかになった。この原因として、アポトーシスの増加、ミクログリア増加を指標とした炎症状態の増加、アストロサイトの増加によるグリオーシスを検討したが、いずれにおいてもATF5欠損マウスの縫線核において顕著な増加はみられなかった。 次に、ATF5が関与する脳内分子機構を明らかにするために、ATF5が多く発現している部位を免疫染色などで解析し、RNA発現解析を行なった。ストレス応答や神経細胞の骨格形成に関する遺伝子発現に増減が見られた。来年度は、これらの因子がATF5と協調して働いているか解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モノアミン作動性ニューロンの起始核と投射先の解析は計画通りおおむね順調に実施できた。また、ATF5欠損マウスのRNA発現解析も計画通り実施することができ、ATF5欠損において発現変動している候補因子の同定を行うことができた。以上のことより、実験計画の実施は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
異常行動を示す脳内分子機構を明らかにするために、引き続きATF5欠損マウスを用いてATF5が関与する分子機構の解析を行う。ATF5欠損マウス脳のRNA発現解析で明らかになったATF5欠損で発現が変動している候補因子の解析を行う。候補因子のRNA発現について、リアルタイムPCRにて解析を行い、評価する。発現変動があった因子の発現部位や結合タンパク質についても解析を行う予定である。また、ドーパミン作働性ニューロンの投射先である扁桃体や線条体におけるドーパミン受容体の発現解析を行い、ATF5欠損マウスにおけるドーパミンシグナルについて解析を行う。
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Causes of Carryover |
RNA発現解析に関するサンプル調整や予備実験が予定より早く行えたために、購入を予定していた消耗品や試薬の購入が少なく、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)