2017 Fiscal Year Research-status Report
不適切環境光入力による概日リズム障害発生機序の究明とその回避方策の検討
Project/Area Number |
17K08580
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
重吉 康史 近畿大学, 医学部, 教授 (20275192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池上 啓介 近畿大学, 医学部, 助教 (10709330)
筋野 貢 近畿大学, 医学部, 助教 (30460843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 概日リズム / 視交叉上核 / 光照射 / c-Fos |
Outline of Annual Research Achievements |
1.環境の光条件変化に対する生体反応の検索 環境の光条件を変化させ,その際にどのような反応が中枢神経系のどの領域に起きるのかを検索する。この検討は、まず恒常明条件を作り、海馬を中心として神経活動がどのような変化を受けるかを再想起遺伝子であり神経活動の指標であるc-Fosを用いて検討した。不適切な光環境(LL条件)によるマウス脳の海馬の歯状回におけるc-Fos陽性細胞数をカウントし、ZT2 (ZT, Zeitgeber time、明期12時間、暗期12時間の光環境下で、明期の始まりをZT0とした。)とZT10で比較した。その結果から、LL条件におけるZT2ではコントロール(LD)に比べてLL1、LL5、LL13の全ての条件においてc-Fos陽性細胞数が減少していた。さらに恒常明条件にて不適切な睡眠覚醒リズム(睡眠妨害)によるマウス脳の海馬の歯状回における各条件でのc-Fos陽性細胞数をカウントしてグラフを作成した。その結果から、コントロールに比べ、睡眠妨害を行うと灌流固定を行ったすべての時間(ZT0,ZT4,ZT8,ZT12)においてc-Fos陽性細胞数が減少していた。次にPER2-LUC KIおよびPer1-luc TGマウスのコロナルスライス(150um厚)で検討を行った。培養開始直後には、海馬に発光細胞の存在を認めた。しかし発光は次第に減弱した。Dex刺激(1または2時間のパルス)を与えても、概日リズムの誘導はできなかった。 2. 海馬、嗅球における細胞新生の概日リズムによる制御の検討 BrdU陽性細胞が僅少なため、アポトーシスの検討をcaspase 3抗体を用いて行った。その結果断眠の影響を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海馬を中心として、不適切な光照射の神経活動に対する影響を一年目は検索した。すなわち恒常明の条件において、概日リズムが影響を受けることを明瞭に提示できることを期待して海馬を中心に検討を行った。しかしその際に問題が生じた。海馬自身が概日リズムを発振する能力が非常に低いことが明らかになった。すなわち、Per1::lucを発現する海馬のスライス培養に対して、デキサメサゾン(Dex)を投与して、概日リズムを発光モニター系によって検討した。すると、Dexの反応は挑められたものの概日リズムの継続は認めなかった。すなわち海馬においてはインビトロの系で概日リズムに対する光入力の影響をin vitroで検証することは困難である。中枢神経系のほとんどの細胞では、概日リズムのフィーバックを概日リズムを発振する能力、少なくともダンピングオシレーターをもつはずであるが、神経系では視交叉上核以外では自立した概日リズムを自律的に発振可能な領域は存在しない。よって今後、中枢神経系で概日リズムを明瞭に発振する領域を探り当てる必要がある。このような検討は初年度に行うべき検討であり、やや遅れていると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず神経活動のマーカーとしてc-Fosの発現を用いて、視交叉上核以外の中枢神経系でどの領域が概日リズムを明瞭に示すのかを明らかにする必要がある。現在までに、脳領域で時計遺伝子の発現を指標として、概日リズムの有無を検討した報告があり、しかしそのほとんどが副腎摘除によってなくなることが示されている。今回、海馬については副腎皮質ホルモンを用いても振動が明瞭に現れなかったことは、少なくとも海馬では継続した概日リズムを発振する能力に乏しいことを示唆する。中枢神経系は視交叉上核以外では、むしろお互いの神経細胞が概日リズムを発振することを抑制している機構が存在することになる。この点を明らかにすることは概日リズムの中枢神経系における必要性という還元から興味深い者である。(1)c-Fosの発現を用いて、中枢神経系のどの領域に概日リズムが存在するかをます明らかにし、明らかになった領域に対して、Per2::luc発現マウスを用いて(2)一方、今回の申請の中心となる課題である、概日リズムを参照した場合の不適切光照射、外部環境による不適切覚醒(昼間に刺激を与えることで断眠とする。)状態での中枢神経概日リズムの変化、神経新生、神経細胞死についての検討も並行して進めていく。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、やや実験に遅延が生じたため次年度使用額が生じた。このプロジェクトでは概日リズムを発振可能な中枢神経系の領域を探索することができなければ、それ以降の検討を進めることができず、その一点に絞って現在、検討を行っている。よって、視交叉上核以外の中枢神経系における、不適切光照射の影響を探索するに至っておらず、未使用の費用が生じた。今年度においては、30年度以降の実験と、29度分の検討を平衡した行うため、次年度使用額を含め、30年度の費用を満額支出する見込みである。
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Research Products
(5 results)