2018 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスと寿命及びNrf2の新規ユビキチンリガーゼSiah2の働き
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17K08581
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今岡 進 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60145795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大黒 亜美 関西学院大学, 理工学部, 助教 (20634497)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / Nrf2 / Siah2 / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Nrf2発現制御因子と発現制御機構の解明 ヒトNrf2及び新しいNrf2制御因子と考えられるWDR23, SKN-1cDNAを単離して、大腸菌での発現・精製を試み、抗体の作成を行った。Nrf2の抗体に関しては、これまでより、性能の良い抗体が作成できwestern blottingにおける非特異バンドが消失し、免疫沈降も可能となった。Hela細胞を用いたWDR23(isoform 1と2の存在を確認した)の過剰発現においては通常状態ではNrf2の発現量に変化がなかったが、tBHQ処理してKeap1を不活化した状態ではNrf2の発現量低下が見られた。一方、WDRの局在は核内で見られたことから、WDR23は核内でNrf2の発現調節に関わっている可能性が示唆された。 2.Nrf2発現制御化合物としてのビスフェノールA(BPA)およびクロロゲン酸(CGA)の作用機序の解明 BPAについては細胞内でCa2+の濃度を上昇させることで、一酸化窒素(NO)合成酵素を活性化することで、NOがKeap1を不活化してNrf2の発現量を上昇させること、さらにラットの実験でも同様のことが起こっている可能性を明らかにし、論文に報告した。現在BPAのターゲット因子を探索中であるが、これまで可能性が示唆されているTRPチャンネル、細胞膜に存在するエストロゲン受容体ではないとの結果は得ている。 3.酸化ストレスが線虫の寿命に与える影響の検討 これまでの検討で、様々な因子欠損線虫を用いることにより、BPAはskn-1発現に依存的に作用していること、CGAはskn-1, daf-16発現に依存的に作用していることが明らかとなった。BPA, CGAは共にskn-1下流因子で抗酸化因子であるgcs-1 mRNAを増加させ、gcs-1欠損体ではその影響が消失することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りに進行した。哺乳動物におけるBPAによるNrf2発現量増加のメカニズムは解明し現在論文作成中である。線虫の変異体を用いた寿命検討では、線虫の操作に慣れていないせいで少し手間取っている。線虫SKN-1の大腸菌における発現精製には成功し、抗体を作成した。線虫のストック培養に不慣れなせいで、またskn-1ノックアウト、過剰発現の個体が十分得られておらず、これから抗体の性能を確認する予定である。また、線虫の因子に関しては、哺乳動物のようにその抗体が市販されておらず、当研究室では様々な因子の抗体作成法を確立しているので、western blottingや免疫沈降が可能な抗体を作成していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が本申請研究計画最終年度であり、CGA, BPAによる線虫SKN-1発現促進さらには寿命に与える影響について、SKN-1の発現調節メカニズムの解明とともにその作用因子を明らかにしていく予定である。今後線虫wdr, daf-16欠損変異体を用いることでwdrとdaf-16の上流、下流を明らかにするとともにBPA, CGAが線虫の寿命を変化させるにあたって、その因子をターゲットにしているのかを解明する。さらに線虫において、SKN-1に続いて、WDRの抗体も作成し、免疫沈降を行い、SKN-1, WDRのリン酸化、ユビキチン化を検出してこれらの因子の制御メカニズムを解明するとともに、寿命へのかかわりを明らかにしたい。
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